☆小さなバーの雇われママの悩み☆

小さなバーの雇われママから相談があった。

現在、コロナ禍のなかオーナーの指示で4月以来休業中である。

 

オーナーは事業者向けの「持続化給付金」や「家賃補助」の申請をしている。

しかし、会社が働き手に休業手当を支払う費用を支援する雇用調整助成金を申請するつもりはないという。

 

オーナーとは形式的には業務委託契約を結んでいる。

報酬は、基本給プラス歩合給だ。

営業日(月曜日から土曜日)や営業時間(19時30分から24時)がオーナーに指示されていることなどから、実質的にはオーナーの指揮命令下で働いている労働者といえる。

 

ママの相談は自分は休業下でどのような法的な保護を受けられるのかということであった。

事業主は、ママは個人事業主だから労働基準法の定める休業手当の対象とはならないし、休業手当を払うつもりはないという。

 

休業手当を受け取れない人が直接ハローワークに申請して受け取れる給付金が新設されるとのことだが、その場合、形式にせよ、労働契約ではなく業務委託契約が締結されていることが支障となるおそれがある。

また、実質的には労働契約であると解されることから、フリーランス(個人事業主)として持続化助成金の申請をするのも、ハードルが高そうだ。

 

形式は業務委託契約、実態は労働者であるいう働き方を強いられている者は少なくない。

今回のコロナ禍は、制度の狭間にあり、労働法の保護から排除された働き手の無保護状態をより顕在化させたといえる。(直井)

 

 

続きを読む 0 コメント

☆会社が退職を迫る二択の罠☆

コロナ禍による業績不振を理由として、①賃金の大幅な減額を伴う本社管理部門から店舗のスタッフへの異動を提示され、それが嫌なら、②自己都合退職してもらう、どちらかを選択して欲しいと社長からいわれた。

どう対応すれば良いのか、との相談があった。

会社から、①労働条件の不利益変更を受け入れるか、さもなくば、②自主退職か、との二者択一を迫られたとの相談は少なくない。

 

二択を迫られた従業員は、自らが採りうる選択肢が会社の示した二択以外にはないと思い込み追い込まれる。

突然の宣告に頭が真っ白となり、労働条件の大幅な切り下げは受け入れ難いため、その場で会社が準備した退職届けに署名してしまう例も少なくない。

会社の思う壺である。

 

そもそも、会社が一方的に提示した二つの選択肢のどちらかを選択しなければならない法的な義務は従業員にはない。

法的には、どちらも断っても、従前の内容の労働契約が継続するだけだ。

契約内容(労働条件)の変更は当事者の合意で成立するものだからだ。

従業員側から給与の減額幅の縮小や退職条件(退職金の増額)の提案など第三の選択肢を逆提案することも許される。

 

もっとも、合意解約ではなく、解雇ならは使用者が一応は一方的に行える。

しかし、解雇が法的に有効であるためには、「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」など厳格な要件が法(労働契約法16条)に定められている。

また、会社が解雇(会社都合退職)を避け自主退職(自己都合退職)にこだわる理由には、法的に争われるリスクの回避とは別に、雇用調整助成金など各種助成金の申請上の不利益を避けるためという事情もある。

 

どちらも受け入れがたい二択を会社から迫られたら、その場での回答は留保して、弁護士、労働組合(ユニオン)など労働問題の専門家に相談することをお勧めします。(直井)

 

 

続きを読む 0 コメント

☆小学校休業等対応助成金の制度設計ミス☆

新型コロナ対策として創設された制度の一つとして、臨時休業した小学校、保育園などに通う子供を世話するために、従業員に有給の特別休暇を取得させた会社に対し、特別休暇中に支払った賃金を助成する小学校休業等対応助成金制度がある。

コロナ感染防止対策として政府が学校等の臨時休校を要請したことにともなって実施された施策だ。

 

この制度を利用して有給での特別休暇を会社に要請したところ、役所への申請手続きが複雑で面倒だからとの理由で断られたとの相談があった。

会社の担当者は、コロナ関連の雇用調整助成金の申請手続きだけで手一杯だ、役所が求める多数の書類を整えるのは大変な作業だ、子供の世話の特別休暇のために同様の作業をする余裕はないと説明したという。

 

任意の申請手続きにおいては、申請により利益を受ける者を申請権者とすることが合理的だ。

自分の利益のためならば多少の手間暇は厭わず申請手続きをすることが期待されるからである。

 

会社を休んで子供の世話をする親の賃金相当額を会社に対して助成する小学校休業等対応助成金において、直接利益を受ける者は子供の親である従業員である。

しかし、従業員自らが役所に申請する手段は用意されていない。

従業員にできることは、会社が役所へ申請することお願いすることだけである。

他方、制度上の申請権者である会社には、手続きの煩雑さのためもあり、申請に手間暇をかける誘因は少ない。

とりわけ役所相手の手続きに不慣れな中小事業者にとっては申請へのハードルは高い。

 

その結果、労働者が希望しても会社が申請しないため、有給の特別休暇が利用できない事態が多発している。

救済されるべき者に何らの手続き上の権利を与えていないこの制度には制度設計上のミスがあると言わざるを得ない。(直井)

 

 

続きを読む 0 コメント

☆良いユニオン・悪いユニオン☆

ユニオンの選び方を教えてほしいとの相談があった。

話しを聴いてみると以下のような事情があった。

 

ある事情から企業内に存在する組合を脱退した。

今後も同じ職場で働き続けるつもりであるが、不利益な配転などいやがらせを受けたときの保険として企業外のユニオンへの加入を考えている。

いま抱えている具体的な交渉事項があるわけではない。

 

ネットでユニオンを検索したら多数のヒットがあった。

明日、ネットで見つけたユニオンの事務所に相談に行くつもりである。

解決金目当ての悪いユニオンも多いと聴くので不安だ。

良いユニオンの見分け方を教えてほしい。

 

ほっとユニオンでは会社内に既存の組合があり、その組合を脱退した者からの案件は解雇案件以外は原則として受けないようにしている。

企業内で組合員を組織し日常的に会社と集団的な関係を築いている組合活動を尊重したいからである。

 

組合運営など何らかの不満があったとしても安易に脱退という選択肢をとるべきではない。

会社組織と違って組合組織には役員選挙など民主的な手続がある。

組合運営に不満ならば、そのような手続きを活用して組合を変えてゆく努力をすべきだと考えるからである。

 

相談者からは、組合を脱退した経緯をあえて聴かなかった。

企業内に当該組合員1人しか組織していないユニオンにとっては、当該企業と日常的な労使関係を築くことが困難であることを説明した上で、その地域で比較的多くの労働者を組織していることを基準としてユニオンを選ぶことをアドバイスした。

組織人数の多さは、個別案件ごとの解決金に頼らず、安定的な組織運営をしていることの証左となる。

 

しかし、労働組合(ユニオン)は利用し、消費する商品ではない。

参加して一緒に活動することを考えてほしい。(直井)

 

 

続きを読む 2 コメント

☆新型コロナと労働相談活動☆

新型コロナは日常生活を一変させた。

コロナ感染が拡大するなか当然ながらコロナ関連の相談が増えた。

 

①公共施設が閉鎖されそのとばっちりで施設内の売店での仕事を失ったとか、

②コロナでの営業不振を理由に自主退職を求められたとか、

③緊急事態宣言をうけての休業は不可抗力であるとして休業手当が支払われないとか、

④メンタルで病気休職中であったが、復職時がコロナ騒ぎとぶつかり復職を拒否されたとか....

 

コロナの影響が及んだのは相談内容だけではない。

外出自粛、感染リスクが高い3密(密閉・密集・密接)回避の影響は労働相談カフェの活動にも制約を加えている。

 

労働相談カフェの売りは、①社労士によるカフェでの気楽な労働相談、②ユニオンによる団体交渉での迅速な解決である。

 

ほっとユニオンでは、相談者に対しても、使用者に対しても、直接相手の顔を見ながら話しを聴くことを基本としている。

直接顔を見ながら会話をすることで生ずる信頼関係を大切にしているからである。

 

しかし、3密回避の要請により、対面での労働相談、対面での使用者との交渉など対面での活動が困難となった。

接触機会の削減のためには対面での活動を必要最小限のものに絞る必要がある。

 

電話での相談活動に重点を移さざを得ない状況である。

緊急事態宣言は延長される見通しである。

コロナ終息まで長丁場になりそうだ。

工夫しながら上手にやり過ごす以外ない。(直井)

 

 

続きを読む 0 コメント