☆シフト勤務でも有給休暇は当然取れます!☆

有給休暇がとれないという警備会社の従業員の相談を受けて、使用者と団体交渉をした。

 

我が社はシフト制(1か月単位の変形労働時間制)をとっており、毎月翌月のシフトの調整をする際に個々の従業員の希望をいれて休み(勤務を要しない日)を決定しているので、有給休暇の必要はない、そもそもシフト決定後に勝手に休まれたら警備先への人員のやりくりができなくなる、との使用者による最初の説明を聴いて唖然とした。

 

そもそも、有給休暇は「勤務を要する日」に有給で休めることを保障する休暇制度である。

有給休暇の趣旨は、労働者の心身のリフレッシュを図ることにある。

 

シフト制の場合、シフト決定後に「勤務を要する日」と指定された日に有給休暇の請求をすることは当然許される。

この会社の場合は、シフト調整時に所定労働日の一部を有給休暇として申請することも認めていなかったようである。

 

有給休暇をとることを前提に必要な人員を確保することは使用者の責任です。

労基法の有給休暇に関する定めは強行法規であるので、有給請求権を事前に放棄する契約は無効です。

 

また、労働者の請求(時季指定)による有給休暇の取得が進まないことから、労働基準法が改正されて、2019年4月からは、年10日以上有休が付与される労働者に対しては企業は5日間の有休を指定して休ませることが義務づけられた(39条7項)。

有給休暇の取得は労働者の権利であるだけでなく、使用者の義務でもあるのです。(直井)

 

 

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☆解雇を争っている場合の公的医療保険の取扱い☆

会社との間で解雇を争っている中で国民健康保険の加入手続きをすることは退職を認めることにならないか、また、そのような場合でも健康保険の被保険者証を返えさなくてはならないのか、との相談があった。

 

解雇について争う以上、国民健康保険の加入手続きをする必要はないと考えてしまいがちです。

しかし、会社が健康保険の被保険者資格喪失届を提出すれば、仮に労働者が解雇を争う手続きを行っていても、保険者(全国健康保険協会、各種健康保険組合など)は、一応資格を喪失したものとして届出を受理し、被保険者資格は消滅することになります。

 

したがって、労働者は、たとえ解雇を争っていても、退職した場合と同様、①国民健康保険に加入するか、②健康保険の任意継続被保険者となるか、③家族の健康保険(被扶養者)に加入するか、のいずれかの手続きをとる必要があります。

国民健康保険の加入手続きをすることと解雇を認めることとは、何ら関係がありません。

 

一方、会社は、被保険者証を労働者から回収して保険者に返納する義務があり(健康保険法施行規則51条)、保険者に被保険者資格喪失届を提出する際、被保険者証を添付しなければなりません。

そこで会社は被保険者証の返還を労働者に求めます。

 

健康保険法には、労働者が健康保険被保険者証を使用者に返還する義務を定める規定はありません。

しかし、労働者が被保険者証の返還を拒んでも、会社は被保険者証添付不能届を添付して被保険者資格喪失届をすることができます。

 

また、解雇日の翌日(被保険者資格喪失日)以降に健康保険被保険者証を使用して医療機関で診察を受ければ、後日、保険者から保険者負担分を請求されることになります。

 

解雇に納得できないことから被保険者証を会社に返したくないという気持ちは分かります。

しかし、あまり実益のない対応です。(直井)

 

 

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☆賞与は払うよ!でも、年収は同じだよ!☆

1年更新の契約社員として働いている友人から、来年度は少額ではあるが賞与が出そうなので嬉しいとの話しを聴いた。

労基法の労働時間規制を排除する高度プロフェッショナル制度の新設など問題が指摘されることが多い「働き方改革関連法」ではあったが、同一労働同一賃金についてはいいこともあるのかと期待したくなった。

 

ところが、最近、期間1年の有期契約で働いている契約社員から愚痴のような相談があった。

使用者より新年度からの新しい契約条件が示された。

賞与は払うことにする。しかし、同時に月例給与を調整する。

結論としてプラス・マイナス・ほぼゼロとなり、年収ベースではほとんど変化なしである。

 

働き方改革関連法にかかる「同一労働同一賃金ガイドライン」(2020年4月1日施行)は、賞与について「問題となる例」として以下の事例を挙げている。

「会社の業績等への労働者の貢献に応じて賞与を支給している会社において、通常の労働者(正社員)には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者(非正規社員)には全く支給していない。」

 

厚生労働省のガイドラインの上記内容を踏まえると、正社員に賞与を支給している場合に、正社員と同種の仕事をしている契約社員に全く賞与を支給しないということは違法と判断される可能性が高い。

 

くだんの使用者は、働き方改革関連法の施行により契約社員の賞与ゼロはまずいということになり、賞与を出すことにした。

しかし、総人件費の増加を押さえるため、月例の賃金を減額することで調整をするということなのだろう。

ふざけた話しである。(直井)

 

 

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☆自宅待機期間中の賃金は10割補償☆

契約社員の雇い止めを巡る団体交渉の中で、使用者から次の提案があった。

 

①更新をあと1回する、だだし、期間は30日間の最後の更新とする。

②最後の更新期間中は自宅待機を命ずる。

③支払う賃金は通常賃金の6割とする。

「30日前の解雇予告」(労基法20条)と「賃金の6割の休業手当」(労基法26条)を組み合わせた提案である。

 

会社と従業員との間でトラブルがあった場合に、そのトラブルによる影響が他の従業員に及ぶことを防止する目的で、渦中の従業員に対し自宅待機が命じられることがある。

自宅待機命令は、懲戒処分としての出勤停止命令とは異なる。

 

出勤停止命令は、従業員に対する制裁として行われるものなので、就業規則に、懲戒処分の種類の一つとして定められていない限り、命じることはでない。

これに対して自宅待機命令は、トラブル拡大の防止とか、不正があったかどうかの調査といった会社の業務の必要上から業務命令として命じられるもので、就業規則に特に定めがなくても命じることができる。

 

ただし、自宅待機期間中の従業員に対しては、通常支払っている賃金を支払う必要がある。

この点について、「休業中は、通常の6割の賃金を支払えばよい。」と誤解している使用者もある。

くだんの使用者も同様であった。

 

労働基準法26条は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定める。

確かに6割の休業手当てを支払えば、刑罰の制裁のある労基法違反の責任は免れることはできる。

 

しかし、労基法上の責任と民事上の責任とは別の話しである。

使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が労務を提供することができなくなったとき、労働者は当該労務提供の反対給付である賃金請求権を失うわけではない(民法536条2項)。

すなわち、労働者は、このような自宅待機期間中、6割ではなく10割の賃金を請求することができる。(直井)

 

 

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☆文句があるなら、裁判に訴えろ!☆

団体交渉において、小規模な会社の場合、弁護士ではなく社会保険労務士が使用者側に同席することがある。

20年以上にわたり建物解体作業に従事したイラン人労働者の不当解雇を巡る今回の団体交渉もそうであった。

 

解雇理由証明書の書き方について会社から相談を受けた社会保険労務士は解雇理由証明書の作成を請け負った。

団体交渉は、その解雇理由証明書に記載のある一つひとつの具体的な事実の確認作業から始まった。

 

同席の社労士は解雇は適法であるとの主張に終始し、「文句があるなら、裁判に訴えろ!」との捨て台詞を吐いた。

当然ながら団体交渉は不調に終わった。

 

団体交渉の場において弁護士や社労士が依頼主である使用者の立場に添った主張を展開するのは当然である。

しかし、労働トラブルを話し合いで解決するためには、それぞれの主張の違いを認識したうえで、そこから一歩進めて、事案にそった妥当な解決策を模索する姿勢が不可欠である。

 

場合によると、依頼者を説得しなければならない場面もでてくる。

話し合いでの解決のためにはそのような調整能力が求められる。

このことは組合側にとってもいえることだ。

 

相談者に寄り添う姿勢は大切であるが、解決のための具体的な方策を見つけ出すためには、当事者から一歩距離を置いて冷静に検討することも大切である。

矛盾するようであるが、当事者と完全に一体となってしまっては、話し合いでの解決は遠のいてしまう。

本件においては当事者となってしまった社労士は調整能力ゼロであった。

 

たとえある程度の譲歩をしたとしても、話し合いで労使トラブルを解決することは、依頼者である使用者にとっても利益となるはずある。

さらにいえば、裁判となった場合、社会保険労務士では対応できないため、弁護士が対応することになる。

 

くだんの社労士の「文句があるなら、裁判に訴えろ!」発言は、無責任な対応といわざるを得ない。

強い言葉を吐いて話し合いの席を立つことは簡単である。

しかし、和解での解決のためには、始めは双方の主張の隔たりがいかに大きくみえても、乗り越える方法を模索する努力が不可欠である。

 

ほっとユニオンは労働トラブル解決のための次の場である裁判所での解決を求めて労働審判申立ての準備を始めることとした。

ほっとユニオンは簡単には諦めません。(直井)

 

 

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