☆試用期間中の社保なしは違法!☆

労働相談を受ける際、まず、労働条件通知書などにより契約の基本的な内容を確認することにしている。

小規模な企業では試用期間中は社会保険に加入しないとの取り扱いをする例が少なくない。

 

「臨時に使用される者」を社会保険の適用除外とする規定(厚生年金保険法12条)についての使用者の誤解ないし悪用と思われる。

試みに使用される者は、勤務の永続性が前提となっているので、「臨時に使用される者」とは性質が異なる。

 

もっとも、私が現実に対応する相談者は試用期間中の社会保険の不適用を問題として相談に来るのではなく、試用期間中の使用者による恣意的な解雇を問題として相談に来るものがほとんどである。

なぜ、社会保険の不加入を問題として企業に怒らないのだろうか。

 

そこには、昨今話題となっている年金の老後資金2,000万円不足問題以前の現状がある。

安定した職場で働けない労働者には老後の年金生活を考えるゆとりさえないのである。

 

老後の年金生活で2,000万円の蓄えが必要であるとの試算のモデルとなっているのは、40年間厚生年金に加入し安定した雇用機会に恵まれた労働者である。

誰もが安心して働ける安定した雇用機会の保証こそが急務である。(直井)

 

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☆解雇撤回だけでは納得できない!☆

美容院でアシスタントとしてシフト制で働く従業員からの相談があった。

仕事上の上司にあたるスタイリストからパワハラを受け、オーナーに相談したところ、オーナーはスタイリストの肩を持ち、不当解雇されたとの相談であった。

 

ユニオンとの団体交渉の席で、オーナーは、解雇はしていない、相談者が自らの意思で辞めたのだ、でも従前どおり働くことを希望するならば明日から出勤してもらってかまわないと述べた。

実質は解雇の撤回であるが、不当解雇の取り消しを求められた使用者の対応としてはよくあるパターンの一つである。

 

解雇案件において解雇が撤回されれば、その間の経緯に多少の不満はあってもそれ以上は争わないで一件落着とし、職場復帰するのは一つの解決策である。

しかし、相談者はすでにシフトが決まっていながら、パワハラのために出勤できずにいた期間の賃金補償の請求を譲らない。

スタイリストから受けたパワハラ行為を考えれば、もっともな要求である。

 

これに対して、オーナーはそもそも解雇はしていないのだから出勤していなかった期間の賃金補償はゼロだと譲らない。

解雇という事実があったのか否か、パワハラ行為は存在したのか否か、という基本的な事実関係についての双方の認識のずれが大きいことが話し合いでの解決を困難にした。

 

ほっとユニオンはこのような場合、労働審判を次の手段として選択することにしています。

本件においても、相談者と今後の方針を相談した結果、相談者の気持ちを尊重して、安易な妥協は避け、裁判(労働審判)で白黒をつける方策をとることとした。

 

手間暇はかかっても、たとえコスパは悪くても、労働者には譲れない一線がある。

ほっとユニオンはそのような労働者のお手伝いをします。

目下、労働審判の申立ての準備作業中である。(直井)

 

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☆事業主の証明を欠いた傷病手当金申請☆

傷病手当金申請書の「事業主証明」欄への記載を拒否する使用者に関する相談は多い。

 

「事業主証明」欄は、傷病手当金申請期間にかかる出退勤の状況やその間の賃金の支払い状況を使用者が記載・証明する欄です。

客観的な事実の記載なので、記載することによって使用者の不利益になることは考えられないが、いやがらせか、理解の不足か、記載を拒否する使用者がいる。

 

健康保険法施行規則33条は、事業主は、従業員から証明を求められたときは、正当な理由がなければ拒むことができないと規定するが、直接的な罰則規定を欠くこともあって、使用者を指導すべき保険者である協会けんぽの対応が十分とはいえない状況である。

協会けんぽには、被保険者(従業員)の権利を守るために、法の規定を無視する悪質な事業主に対しては、強力な指導を行い、健康保険法197条の報告等義務違反として、場合によっては健康保健法216条の規定を適用しての過料(10万円以下)の制裁を視野に入れる強い対応を期待したい。

 

協会けんぽに使用者に対する強い指導を促す方法として、事業主証明欄への記載を使用者に拒否されている事情を記載したメモ(事業主証明欄が欠ける理由書)を添えて、事業主証明欄を空白のままで申請書一式を協会けんぽ宛て郵送する方法をお薦めしたい。

単なる電話での指導のお願いとは異なり、申請書の提出は協会けんぽに対するプレッシャーとなる。

協会けんぽの担当者が事業主へ電話による説得を行うことが期待できる。(直井)

 

 

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☆訴訟を見据えた団体交渉の準備☆

ほっとユニオンは、労働トラブルを使用者との団体交渉により解決することを第一としている。

しかし、話し合いが行き詰まったときに次に採りうる手段を事前に準備することにしている。

この事前準備抜きで交渉を始めると、使用者に足下を見られてしまい、結果として交渉での解決に時間がかかることがある。

 

集団的な労使関係においては、団体交渉が行き詰まったときの打開の手段はストライキに代表される争議行為である。

しかし、、駆け込んできた従業員1名しか当該企業内には組合員がいない相談ユニオンにとってストライキは選択肢にはない。

 

ほっとユニオンは団交の次の手段としては裁判所の活用を考えている。

具体的には比較的簡易な手続である労働審判手続きの利用である。

 

そのために、団交に入る前に十分な相談者への聞き取りと、どのような証拠があるかを確認することにしている。

裁判手続を見据える以上、労働者が法的な権利を有することだけでなく、それを証明できる証拠があることが求められる。

 

解雇案件にあたっては次のような証拠の有無を確認する。

①解雇されたこと(解雇通知書、口頭での解雇言い渡しの場合は、何時、どこで、誰から、どのように言われたかを記載したメモでも可)。②解雇に値する具体的理由がないこと

前提として使用者の主張する解雇事由を確認することが不可欠である。(解雇理由証明書、解雇理由についての使用者の口頭での発言メモなど)

 

就業規則などの規定に解雇理由として記載のある抽象的な解雇理由を述べるのみで、具体的な解雇事由(解雇理由となった具体的な事実)を明らかにしない使用者も少なくない。

その場合は、具体的な解雇事由を明らかにすることを求めることから団体交渉を始めることになる。(直井)

 

 

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☆パワハラは違法です!☆

5月29日、職場でのパワハラを防ぐため、相談窓口設置などパワハラ防止策を企業に義務づける法律が成立した。

大企業には2020年4月から、中小企業は22年4月から義務づけられる見通しだ。

 

法律は、パワハラを、①優越的な関係を背景に、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③就業環境を害することと、定義し、セクハラ、マタハラとともに、パワハラを「行ってはならない」と明記する一方、罰則規定は見送られた。

罰則規定を欠くことで改正法の実効性を疑問視する見解もある。

 

企業の外にあるユニオンの労働相談においてパワハラ相談は相談項目としては解雇とならんで、1、2位を一番を争う項目だが、正直言って、「性的な言動」と「業務上の指導」との区別のつきやすいセクハラとは異なり、対応に苦慮することが多い。

法律にパワハラ行為の定義規定や禁止規定のないことが使用者に対する説得を難しくしていた。

今後はこの法律の規定を手がかりとして、より積極的に使用者と交渉を進めることが可能となる。

 

職場のパワハラを撲滅するためには職場で働く者がパワハラは違法行為だという認識を共有することが不可欠だ。

かつて駅構内で「痴漢は犯罪です」と記載したポスターを目にし新鮮なショックを受けたことがある。

経営者は「パワハラは違法です!」というポスターを職場に張るくらいのことをする覚悟でパワハラ撲滅に取り組んでほしい。(直井)

 

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