☆ソーシャルビジネスとしてのユニオン運営☆

ほっとユニオンは相談者が組合に加入する前提として例外なく月例組合費1,000円の1年分12,000円の一括前納を求める方針をとっている。

この方針についてほっとユニオンは冷たいとの相談者からの声があった。

 

もっと柔軟に対応できないかとの指摘である。

具体的には、現在の生活に困窮している相談者の場合は、会社から交渉の成果を獲得した時点での後払いを認めたり、ほっとユニオンの他の組合員からカンパを募ったりして対応できないかという提案である。

ほっとユニオンの運営費(人的経費、事務所費など物的経費、交通費など活動費)は、組合員の納める月例組合費と特別組合費(組合の交渉等によって得た経済的利益の一定割合の納付)とによって賄われている。

労働基準監督署、都道府県労働局などのように税金で運営されているところとは違い、経営という観点を軽視することは許されない。

篤志家の寄付によって賄われている慈善団体でもない。

 

また、ほっとユニオンは相談を都内のJR駅近くのカフェで行っている。

比較的静かでゆっくり話せるカフェという意味でルノアールを利用することが多い。

これに対しても、多少騒がしくても、もっと安いカフェにできないかとの意見もあった。

 

街中のカフェの活用は自前の相談室の代替である。

ほっとした気分になれるカフェで気楽に相談を受けるというのは、ほっとユニオンの売りでもある。

もっとも、相談者が面談予約の際にカフェの希望を述べれば、相談者の指定するカフェで相談を受けることになる。

 

まだまだ模索中であるが、ほっとユニオンを継続可能なソーシャルビジネスとして育ててゆきたいと考えている。

ほっとユニオンは、労働者の立場から労働トラブルの解決を目指す組織であり、利益を追求する組織ではないが、運営の基盤となる組合費収入を軽視するような対応は許されない。(直井)

 

 

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☆傷病手当金申請手続きに協力しない使用者への対応策☆

ほっとユニオンは団体交渉での自主解決が行き詰まったとき、次の手段として、労働審判(裁判所)や労働委員会に解決の場を移すことににしている。

 

労働審判は、残業代未払いや不当解雇などで使用者の行為の違法性の立証が比較的容易な場合に利用する。

労働審判は、裁判所の手続きであるが審判まで至らず、調停(話し合い)手続きで解決することが多い。

労働者が求めている解決内容が金銭の支払いである場合に有効である。

 

これに対し、労働委員会における和解手続きは窓口が広く柔軟性がある。

法的請求権として使用者に強制することが事実上困難な事案にも有効である。

形式的には不誠実団交ないし団交拒否の不当労働行為として申立てをする。

しかし、実際は和解手続きにより団交内容(労働者と使用者間のトラブル)の実質的な解決を図ることが可能である。

 

先日、傷病手当手金の申請手続きをめぐる争いが労働委員会の和解手続きで解決した。

退職をめぐる争いのなかで傷病手当手金の申請手続きに協力しようとしない使用者に困り果てた労働者がほっとユニオンに相談にきてユニオンに加入した。

ほっとユニオンは団体交渉を申し入れたが、交渉は一向に進展しなかった。

使用者の露骨な嫌がらせである。

 

ユニオンは労働委員会に使用者の対応は実質的な団交拒否にあたるととして救済申し立てをした。

労働委員会での和解手続きの中で使用者が傷病手当基金申請手続きを行う旨の和解が成立した。

 

使用者・従業員間でこじれた感情の問題もあり、ユニオンによる対面での交渉では説得しきれなかった使用者を労働委員会の公益委員、労働者委員、使用者委員が上手に説得してくれたのである。

公労使の三者構成の仕組みをもつ労働委員会の真骨頂の発揮といえる。

 

もっとも、傷病手当金申請手続きにおける使用者の協力は健康保険法上の使用者の義務である。

保険者である協会けんぽが強力に使用者を指導してくれれば、このような形での労働委員会活用法も無用になるだろう。(直井)

 

 

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