☆1年未満で辞めたら、借り上げ社宅の家賃を遡って請求!☆

本年4月1日に正社員の保育士として保育園に入職したが、人手不足による業務多忙のため体調を崩したことから、9月末日をもって退職した。

退職に伴い社宅を明け渡す際、園から自己負担なしで提供されていた借り上げ社宅の家賃6か月分(42万円)の支払いを求められたとの相談があった。

 

園は、1年未満で退職したことが遡って家賃6か月分を請求した理由だという。

また、園は、入職時に相談者にその旨説明したというが、相談者にはそのような説明を受けた覚えはない。

 

しかしながら、かりに1年未満で退職した場合には遡って借り上げ社宅の家賃を支払うとの約束が交わされていたとしても、そもそも、その約束は労働基準法に違反する疑いがある。

 

労基法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定する。

労働契約において、契約期間の途中で退職した場合の違約金や損害賠償の予定の定めがあると、労働者はその意に反して雇用契約の継続を強制されることになるので、これを禁止し、労働者の退職の自由を確保する趣旨である。

 

借り上げ社宅を無償で提供しながら、入社後1年未満で退職した場合は遡って社宅の賃料相当分を請求するという契約は、労働者の退職の自由を確保するという、労基法16条の趣旨に反する違法な契約と言わざるを得ない。(直井)

 

 

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☆年度途中で退職した保育士に対する家賃請求☆

都内のある区に所在する保育園を退職した保育士からの相談があった。

この4月に採用され、5か月間勤務の後に職場の人間関係のストレスから退職したところ、保育園から無償で提供されていた借り上げ宿舎の家賃分として40万円(8万円×5月分)の支払いを求められた。

 

園の説明によると、保育士の宿舎借上げに対する区による助成を前提として借り上げたマンションを保育士に無償で提供していたが、年度途中の退職者は区の助成の対象とはならないため、園が負担した家賃額の返還を求めるとのことである。

区に照会したところ、確かに年度ごとの補助事業であり、年度途中に退職した保育士にかかる借り上げ家賃は助成の対象とはならないこと、及び、園と保育士との家賃負担の紛争について区は関与しないとの回答があった。

 

この家賃助成制度は、近年問題となっている保育士不足対策としての厚生労働省の「保育士宿舎借り上げ支援事業」に基づくものである。

園は、行政による「保育士への家賃補助制度」を都合のいいように解釈して、年度途中退職者の足止め策として利用している。

 

相談者によれば、年度途中対象の場合は家賃を請求するとの説明を契約締結時に受けていないしそのような合意もしていないとのことだ。

この点は入社初日に説明済みとの園の主張と齟齬がある。

 

しかし、仮にそのような合意があったとしても、その合意自体が労働基準法16条が禁ずる「退職に対する損害賠償額の予定」の趣旨に反する違法なものである。

区の関知しないとの対応には疑問がある。(直井)

 

 

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