☆解雇は転職に不利?☆

辞めてくれないかといわれた、解雇されると履歴が汚れるので解雇は避けたい、解雇を言い渡されるくらいならば退職することを考えている、しかし、離職票には自己都合ではなく会社都合として記載して欲しいという相談があった。

 

解雇されたら履歴が汚れる。

転職への悪影響が心配だ。

転職の面談の際、前職の離職理由を解雇といいたくない。

以上のように考える労働者は少なくない。

 

使用者は、従業員のこのような不安を逆手にとって、退職に応じないならば、解雇すると脅し、執拗に退職願いへの署名・押印を求める。

 

しかし、使用者の狙いは、後で解雇の適法・違法が争われるリスクを避けることにある。

 

他方、何事も金銭換算したコスパ・損得で判断したがるネット情報の影響か、離職票の記載に会社都合を求める労働者は多い。

会社都合の離職が失業手当の給付において有利であるからだ。

 

転職など自己の都合により離職した場合は7日間の待機期間にプラスして給付制限期間(3か月)がある。

解雇など会社の都合により離職した場合は受給資格決定後7日間の待機期間が経過すれば給付を受けられる。

収入の道をたたれた退職者にとって3か月間も給付を待たされることのダメージが大きい。

 

解雇の不名誉は避けたい、他方、失業手当の関係では会社都合(解雇、退職勧奨など)としたいと考えているのが退職を迫られた多くの労働者の本音といえる。

 

そのため、ほっとユニオンは、解雇が争われた案件の和解において解雇撤回・円満退職で解決した場合、「会社都合による退職」という文言を合意書に入れることにしている。

 

しかしながら、そもそも、非行行為などを理由とする懲戒解雇でないかぎり、解雇を言い渡されることは労働者にとって必ずしも恥ずべきことではない。

納得できない解雇ならばなおさらである。

 

弱気にならず、納得できないならば、安易に退職願いへの署名・押印はしないで、まず、専門家に相談することを薦める。

安易に任意の退職に応じないことによって、同じ辞める結果になるとしても、使用者の譲歩を引き出し、より有利な退職条件を得ることが可能になる。

 

強いことを言っても、使用者の本音は訴訟リスクを回避するために解雇を避けることにある。

使用者にとっても正式に解雇を言い渡すことは怖いものなのです。(直井)

 

 

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☆使用者による有給休暇の時季指定義務☆

労働基準法の改正(労基法39条7項8項新設。2019年4月1日施行)により、年次有給休暇のうち5日間については、使用者に積極的な付与義務(時季指定義務)が課された。

さらに従業員ごとに年休の年休の取得日、取得日数などを記載した年次有給休暇管理簿の作成・保管も義務づけられた(施行規則24条の7)。

 

1947年の労基法制定以来、年次有給休暇を取る基本的な仕組みは、年休付与義務を負うのは使用者だが、年休をとる時季を指定をするのは労働者だというものだ。

すなわち、先ずはじめに時季指定という労働者の積極的な行為がなければ、年休取得のための手続きは始まらない仕組みだ。

使用者には労働者に希望する時季を聴取するなど積極的に年休の取得のための環境を整備する義務はない。

 

したがって、うちの会社には年休制度がないと労働者が労基署に相談にいっても、まず、労働者自らが時季指定行為をして、それに対する使用者の拒否行為がなければ、労基署としては対応のしようがないと追い返されることになる。

事実上取得していないこと、事実上取得できないこと自体は、労基法の直接関与するところではない。

使用者の拒絶反応が予想されるなか、あえて年休を申請して拒絶されるというリスクをおかさなければ、労基署が対応する案件とはならない。

 

確かに法の定める要件が満たせば、特に何の手続きを要しないで法定の日数の年次有給休暇は発生する。

しかし、40日の有休休暇を持っているといっても、現実に使用しなければ、何の足しにもならない。

取得手続きについての法の定めは重要だ。

 

年休取得手続きにおいて使用者は労働者の時季指定を待つという消極的な位置づけであることが労基法の基本的態度である。

労働者が時季を指定して請求することに対して使用者が妨害することが違法とされる仕組みである。

このため、事実上権利行使ができない職場は労基署の指導もなくそのまま残されていた。

 

個人経営の小規模な事業所では、従業員の必要に応じて適宜使用者が恩恵として休むことを認めるなどの個別的な対応をとるところがある。

シフト制を採用している事業所においては、シフトの調整時に従業員の休みの希望日(勤務を要しない日)を聴いているのだから、年休は必要がないと公言する経営者もいる。

年休を取得する慣行もなく手続きも整備されていない職場にあっては、使用者との軋轢が予想されるなか、労働者が年休取得のための時季指定行為をするのは事実上高いハードルがある。

 

労基法改正は年休取得手続きのなかの一部に使用者の積極的行為(時季指定行為)を組み込んでそれを使用者に義務づけるものだ。

新制度は3月末日で施行後1年が経過することになる。

年休の取得率はどの程度上昇したのか、はたまた上昇しなかったのか、政府の報告を注視したい。(直井)

 

 

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☆フリーランス美容師によるアシスタントいじめ☆

パワハラを受けていると、美容師からの相談があった。

相談者は美容院でスタイリストをサポートするアシスタントとして働く女性である。

パワハラ行為者は男性のスタイリストである。

 

スタイリストがアシスタントにちくちく発するいやみをめぐり、言い争いに発展した。

スタイリスト曰く「アシスタント同士は勤務時間中話しをするな」、「自分は水すら夜まで飲めないぐらい働き詰めなんだから、その間、アシスタントも水を飲むな」「スタイリストの売上げからアシスタントの給料を払っているのだから」

これに対しアシスタントが反発して、「あなたにそこまでいわれる筋合いはない」と言い返したところ、スタイリストは「オーナーにいって辞めさせてやる。」と強く反撃した。

 

スタイリストは即座にオーナーに電話をし、あのアシスタントとは一緒に働けない、アシスタントを辞めさせろ、アシスタントが辞めないのならば俺が辞めるとすごんだ。

他方、アシスタントはオーナーにスタイリストの暴言を伝え指導を要請した。

 

俺をとるかアシスタントをとるか、とスタイリストにすごまれたオーナーはスタイリストの側についた。

オーナーはアシスタントのシフトをこれまでの週4日から週1日に減らしたうえでスタイリストの休みの日のみを勤務日に指定するようなシフトの変更をアシスタントに伝えた。

 

スタイリストは、オーナーから美容室の場所の一部を借りてその売り上げをオーナーと折半する契約を締結して働く個人事業主である。

アシスタントはオーナーと労働契約を結び時給1000円で働いているシフト勤務のパート従業員である。

 

立場の違う労働者同士の諍いといえる。

スタイリストは、収入が売上げに直結していることから、働き詰めの状態に追い込まれている。

スタイリストもオーナーとの関係では弱い立場の労働者といえる。

 

収入の保証のないなかで働き詰めを強いられる弱い立場の労働者がより弱い立場のパート労働者をいじめる構図がそこに見えてくる。

働き方の多様化による労働者の分断が生んだ闇である。(直井)

 

 

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☆ユニオンですけど、会社側弁護士からの紹介案件あり!☆

高校新卒として昨年4月に大手企業に入社し一年足らずで退職した息子に係る労働相談を父親から受けた。

相談者は、弁護士からほっとユニオンを紹介されたとのことで、紹介弁護士の名前を告げた。

すぐには思い当たらない名前だった。

 

相談終了後、過去の資料を調べたところ、交渉相手の会社側の代理人として接触したことのある弁護士だったことが分かった。

直接会ったのは弁護士事務所で行われた解雇問題の団体交渉の1回だけだ。

てっきり知り合いの労働側の弁護士の紹介だと思い込んでいたため、思い当たらなかったのだ。

 

その後、相談者と再び話す機会があったので、紹介弁護士との関係を聴いた。

相談者の経営する飲食店の関係での知り合いとのことであった。

息子の退職後に会社から郵送されたきた社会保険料や賃金の過払い分の請求書について、弁護士に相談したら、弁護士として受任すると費用倒れになってしまうので、ユニオンのほうが適当であるといわれ、ほっとユニオンが紹介されたとのことであった。

 

労働側関係者からの紹介案件はままあるが、会社側関係者からの紹介案件はめずらしい。

かつての団体交渉の相手方に信頼されたのはちょっと嬉しい感じがした。

 

なお、当該相談案件は、息子氏を伴って会社に赴き、人事担当者と面談し、請求金額について詳細な説明を受けることで解決した。

ほっとユニオンは弁護士が取り扱わないペイしない事案にも対応します。(直井)

 

 

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☆契約書の交付を求めたら、契約は白紙に!☆

サッカークラブから指導員としての採用の申し込みを受けて、自宅のある九州から関東のクラブ事務所を訪問し面接を受けた。相談者が口頭で説明を受けた労働条件を記載した労働契約書の交付を求めたところ、そのような要求をする者とは信頼関係が持てないとして、突然、契約を白紙に戻されたとの相談があった。

 

労働契約は口頭による約束であっても有効に成立します。

契約書の交付は労働契約の成立要件ではありません。

しかし、契約書は、労働条件を巡る採用後のトラブルを防止するうえで重要なものです。

 

労働契約書の交付を求める相談者に対し、面倒な権利主張をするトラブルメーカーになる恐れがあると感じて、クラブ側は契約を白紙に戻したと推測できる。

しかし、合意した契約内容を記載した労働契約書(ないし労働条件通知書)の交付を求めることは法律が定める労働者の当然の権利であり、労働契約書を交付することは使用者の義務でもある。

 

労働基準法(労基法15条、労基規5条)は、労働契約を巡るトラブルを事前に防止し労働者を保護するために、①契約期間、②就業の場所・従事する業務、③勤務時間・休日、④賃金など基本的な労働条件については、書面を交付する方法によって明示することを使用者に義務づけている。

労働基準法の趣旨からすれば、契約書の交付を拒否して契約を白紙に戻したクラブ側の対応は違法といわざるを得ない。

 

労働契約がすでに成立していたと解される場合には、契約破棄の無効を主張して地位確認とバックペイを請求して裁判を提起することが可能だ。

労働契約の成立に疑問がある場合でも、契約の成立を期待して遠方から出向いた相談者の利益は守られるべきだから、交通費など契約締結の過程で相談者が支出した経費をクラブ側に損害賠償請求することは可能だ。

 

労働基準法の規定にもかかわず、契約書(ないし労働条件通知書)を交付しない使用者は少なくない。

とりわけ、個人経営の小規模な会社においては多くみられる。

弱い立場にある労働者側からは言い出しにくいことがらであるので、労基署の積極的な指導・啓発活動を期待したい。(直井)

 

 

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