☆無断欠勤を理由とする自然退職☆

上司のセクハラ行為が原因で体調を崩し1か月ほど出勤できない状態が続いていたところ、会社から突然、無断欠勤が1か月以上続いているので就業規則の規定に基づき自然退職とするとの通知がきたが、納得ができないとの相談があった。

 

自然退職とは、就業規則や雇用契約に定められている事由を満たした場合、労働者や会社の特段の意思表示(退職する、解雇するなど)がなくとも労働契約が自然に終了し退職扱いとなることをいう。

 

就業規則に規定のある自然退職の代表的な事由としては、「病気休職期間が満了しても復職できない場合」がある。

特段の意思表示を必要としないという点で定年退職も自然退職の一種である。

「一定期間続いた無断欠勤」が自然退職の事由として挙げられることもある。

 

確かに、本件会社の就業規則には、「会社に届出のない欠勤が連続1か月に及んだ場合、1か月を経過した日をもって退職とする。」との規定がある。

しかし、労働者にとって退職は生活の糧を失うという重大時であることから自然退職手続きにも一般の解雇手続きと同様な配慮が求められる。

 

会社は長期間の無断欠勤の社員本人に対し積極的に連絡を取り社員の状態を把握すべく努める義務がある。

会社は社員に対して、安全に働く環境を提供する義務を負っているからである(安全配慮義務、労働契約法5条)。

 

本相談事例の場合、会社は、欠勤者の状態や意思を積極的に確認しようとすることもなく、ただただ1か月間の経過を待って自然退職の通知を発した疑いがある。

また、欠勤の原因が上司のセクハラなど会社に原因がある場合は別の配慮が求められることも当然である。

 

 

したがって、本相談事例においては自然退職の事由(無断欠勤)に該当するという会社の主張は疑問であると言わざるを得ない。(直井)

 

 

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☆労働トラブルと闘うために準備する資料☆

ほっとユニオンは、不当解雇・未払残業代などの労働者トラブルの相談を受けたとき、まずは使用者との話し合いである団体交渉での解決を目指します。

団体交渉においてはどのような法的権利が侵害されたかなど、具体的な権利関係を踏まえた交渉を実施します。

権利関係を踏まえた交渉を重視する理由は、交渉が行き詰まったとき、次の手段として裁判所の利用を考えているからです。

 

ほっとユニオンは、団体交渉が不調に終わったときは、労働審判の申立てを行うことにしてます。

裁判所に争いを持ち込むためには、労働者が法的な権利を有することだけでなく、それを証明できる証拠があることが必要となります。

 

事案により必要な資料は異なりますが、具体的には次のような資料が必要です。

基本的な資料は労働相談の時点で持参していただけると助かります。

 

①不当解雇

・雇用されていたこと(雇用契約書、労働条件通知書、給与明細書)

・解雇されたこと(解雇通知書、口頭での解雇言い渡しの場合は、何時、どこで、誰から、どのように言われたかを記載したメモでも可)

・使用者の主張する解雇理由(解雇理由証明書、書面がない場合は解雇理由について使用者が発言した内容を記載したメモでも可)

 

②未払残業代

・労働時間の記録(タイムカードのコピー、業務日誌のコピー、パソコンのログ記録など。なお、客観的な証拠がない場合は、自分で毎日記載したメモでも可)

・支払われた賃金などの記録(給与明細書、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則のコピー)

 

③セクハラ

・セクハラ行為(メール、録音など。なお、客観的な証拠がない場合、いつ、どこで、誰が、どのように、とセクハラ行為を具体的に記載したメモでも可)

・被害の内容(メンタルクリニックの診断書など)

 

④パワハラ

・パワハラ行為(録音、客観的な証拠がない場合、いつ、どこで、誰が、どのように、とパワハラ行為を具体的に記載したメモ)

・被害の内容(メンタルクリニックの診断書など)

(直井)

 

 

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☆セクハラ解決金の相場☆

 

相談者から解決金の相場について聞かれることが多い。

幅はあるが、失った賃金(ないし失う賃金)を損害として計算のうえ賃金○か月分程度と答えることにしている。

解雇案件は、解雇の違法性の強弱や相談者の年齢・勤続年数など個別の要素を考慮する。

答えが難しいのはセクハラ案件だ。

 

裁判におけるセクハラ行為に対する慰謝料の相場は、その行為の継続性や悪質性、性行為の有無、精神疾患の発症や、休職・退職したか等さまざまな事情が考慮される。

裁判外に和解においても、裁判における考慮要素が一般的な基準となるが、被害者の被害感情及び加害者の支払い能力も額の決定に大きく作用する。

加害者が経営者であり支払い能力がある場合など被害者の求める請求額は高額となる傾向がある。

被害女性にしてみれば、加害者が困るような額でないと溜飲が下がらないということのようだ。

そのような場合、被害者の納得をどのように得るかが和解の成否のカギとなる。(直井)

 

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