☆使用者に異議申し立てをする勇気を!☆

ほっとユニオンの相談活動は、労働関係法令などの情報を与えるだけではなく、解決への具体的なお手伝いをすることを売りにしている。

対応に戸惑う相談のひとつに、相談者が何を望んでいるのか不明確な相談がある。

 

相談内容は多様である。

社会保険に加入させてもらえないこと、サービス残業があること、パワハラを受けていること、セクハラを受けていること、などなど。

 

相談員は相談者の不安・不満を一通り聞いた上で、上司や使用者の行為の不当性・違法性について説明する。

次に相談者の不安・不満の具体的な解決策について話しを進めることになる。

 

ユニオンに加入しての交渉だけでなく、社内のコンプライアンス部署への通報・相談や、労働基準法違反の事実が確認できれば労基署への違法申告を、健康保険法違法の事実が確認できれば年金事務所などへの是正を求める相談を提案するが、相談者が話に乗ってこないことがある。

 

不当ですよね、違法ですよね、と説明に一応納得した後、また、使用者の不当・違法な行為についての話しを繰り返えす相談者がある。

違法ならば、自らが行動を起こさなくても、自分以外の誰かが是正に動いてくれることを期待しているようである。

雇用関係の継続を前提とした相談に多く見られる。

 

上司や使用者とは自らが表に出て争いたくない。

自分が表に出ないで、第三者が代わりに解決してくれる方法はないかと考えているようである。

しかし、率直に言って、自らが声を上げる以外解決策はない。

 

労働基準法など法律に定めている権利があっても、現場の労働者ひとり一人が違法状態の是正を求め声を上げなければ、絵に描いた餅になってしまう。

ほっとユニオンは問題解決のために相談者と一緒に行動します。

しかし、丸投げは困ります。(直井)

 

 

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☆労基法の休業手当(6割)と民法原則(10割)

休業要請対象業種ではないが、コロナ禍のなか4月から上司の休業指示を受け、緊急事態宣言が解除された後も休業指示が続いている。労基法の定める平均賃金の6割の休業手当は支払われているが、これでは生活ができないので困っているとの相談があった。

 

使用者の責めにきすべき休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない(労基法26条)。休業手当と称されるものである。他方、民法においては、債権者(使用者)の「責めに帰すべき事由」による債務(労働義務)の履行不能の場合には債務者(労働者)は反対給付請求権(賃金請求権)を有するとされている(民法536条2項)。

 

この民法原則と休業手当の保障との関係については、労基法上の休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は民法上の反対給付請求権の有無の基準である「責めに帰すべき事由」(故意、過失または信義則上それと同視すべき事由)よりも広い。

すなわち、民法上は使用者の帰責事由とならない経営上の障害も天災事変などの不可抗力に該当しないかぎりは労基法上の使用者の帰責事由に含まれると解されている。

 

要するに、休業手当は、労働者の最低生活を保障するために、民法により保障された賃金請求権のうち、平均賃金の6割にあたる部分の支払いを罰則によって確保したにとどまらず、使用者の帰責事由をも拡大した。

 

以上は「労基法上の休業手当(6割)と民法原則(10割)の関係」についての代表的な労働法の教科書の説明である。

相談者が労基法上の6割ではなく民法上の10割を求めて裁判を提起する場合、当該休業にかかる使用者の帰責事由(故意、過失または信義則上それと同視すべき事由)の存否が争点となる。(直井)

 

 

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☆労働者の休業給付金申請に対する使用者の協力義務☆

コロナ休業を指示されたにもかかわらず、休業手当が支払われない中小企業の労働者向けの給付金制度が7月10日から始まった。

名称は「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」だ。

休業前の賃金の80%(上限日額1万1千円)を受け取れる。

労働者による直接申請のほか、企業がまとめて申し込むこともできる。

労働者が申請する場合に必要な書類は以下のとおりだ。

①支給申請書

②支給要件確認書

③添付資料(ⅰ運転免許書など本人確認書類、ⅱキャッシュカード、通帳など金融口座確認書類、ⅲ給与明細、賃金台帳など休業開始前賃金及び休業期間中の給与を証明できる書類)

 

先のブログ(6月20日)でも指摘したが、労働者が直接申請する給付金制度の運用上の懸念は、使用者が必要な証明に協力しない場合の対応である。

この懸念に対して、「支給要領」は、事業主から「支給要件確認書」への記載の協力が得られなかった申請者は、事業主名記載欄に「事業主の協力を得られない」旨及び(事業主から拒否された、倒産のため事業主と連絡がとれない等)その背景となる事情を記載すればよいとと答えている。

 

次に、労働者が給与明細を保存していない場合の取扱いも気になる。

過去の給与明細を保存していない労働者は少なくないと思われる。

この場合は、使用者が作成保管している賃金台帳のコピーの提出で可ということだが、これにも事業主の協力が必要である。

 

なお、給与振込口座の記帳内容のコピーでも可である。

ただし、口座の記帳額は給与の額面額ではなく、税金、社会保険料などを控除した手取額であることから、これを基準とすると額面額を基準とする場合より平均給与額は小さくなるという不利益がある。

 

労働者が直接申請できる休業給付金とはいうものの、適切な情報収集には使用者の協力が不可欠である。

使用者の協力義務を明確にした上で、使用者の協力を得られなかった場合、行政が使用者へ強力な指導する運用が望まれる。(直井)

 

 

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☆雇調金検討なしの整理解雇はコロナ便乗解雇!☆

東京都においては新型コロナの新規感染者が100人を超える状態にあり先行きに依然不安がある。

他方、緊急事態宣言の解除後、自粛要請が緩和されたことに伴い、事業活動が再開されるなど日常が戻りつつある。

休業状態だった企業活動は再開されたが、コロナ禍による業績悪化を理由に休業からの復職を拒否されそのまま整理解雇を言い渡されたとの相談があった。

 

雇用調整助成金は、休業手当を支払って雇用を維持している企業に対する助成金である。

新型コロナ特例の助成措置は数度の改正を経て手厚くなり、中小企業であれば、助成率は100%(上限1人1日1万5千円)である。

したがって、雇用調整助成金を利用すれば少なくとも助成対象期間(4月1日から9月30日)の人件費の負担は避けられることになる。

 

このような状況下において雇用調整助成金の利用を検討しないまま言い渡された整理解雇の有効性には疑問がある。

整理解雇の有効性の判断基準としての4要件(①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③人選の合理性、④労働組合(ないし従業員)への説明)がある。

雇用調整助成金の利用を検討しないでなされた整理解雇は、②解雇回避努力義務の履行を満たしていないと考えられる。

 

雇用調整助成金は不況下における企業の解雇を避け雇用維持を目的とする助成金である。

解雇回避努力義務の履行のひとつとして、雇用調整助成金の活用は当然検討されるべきである。

従前の雇用調整助成金は人事制度の整った大企業向きの制度であったが、コロナ特例の雇用調整助成金は、数度の改正の結果、中小企業に非常に手厚いものとなり、また利用しやすいように工夫されきた。

 

雇用調整助成金の利用を検討もしないでなされた整理解雇は労働契約法16条(「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効である。」)の規定により無効と解される。

コロナ禍のなか安易に整理解雇を実施することはコロナ便乗解雇であり許されない。(直井)

 

 

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