☆労働トラブルと闘うために準備する資料☆

ほっとユニオンは、不当解雇・未払残業代などの労働者トラブルの相談を受けたとき、まずは使用者との話し合いである団体交渉での解決を目指します。

団体交渉においてはどのような法的権利が侵害されたかなど、具体的な権利関係を踏まえた交渉を実施します。

権利関係を踏まえた交渉を重視する理由は、交渉が行き詰まったとき、次の手段として裁判所の利用を考えているからです。

 

ほっとユニオンは、団体交渉が不調に終わったときは、労働審判の申立てを行うことにしてます。

裁判所に争いを持ち込むためには、労働者が法的な権利を有することだけでなく、それを証明できる証拠があることが必要となります。

 

事案により必要な資料は異なりますが、具体的には次のような資料が必要です。

基本的な資料は労働相談の時点で持参していただけると助かります。

 

①不当解雇

・雇用されていたこと(雇用契約書、労働条件通知書、給与明細書)

・解雇されたこと(解雇通知書、口頭での解雇言い渡しの場合は、何時、どこで、誰から、どのように言われたかを記載したメモでも可)

・使用者の主張する解雇理由(解雇理由証明書、書面がない場合は解雇理由について使用者が発言した内容を記載したメモでも可)

 

②未払残業代

・労働時間の記録(タイムカードのコピー、業務日誌のコピー、パソコンのログ記録など。なお、客観的な証拠がない場合は、自分で毎日記載したメモでも可)

・支払われた賃金などの記録(給与明細書、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則のコピー)

 

③セクハラ

・セクハラ行為(メール、録音など。なお、客観的な証拠がない場合、いつ、どこで、誰が、どのように、とセクハラ行為を具体的に記載したメモでも可)

・被害の内容(メンタルクリニックの診断書など)

 

④パワハラ

・パワハラ行為(録音、客観的な証拠がない場合、いつ、どこで、誰が、どのように、とパワハラ行為を具体的に記載したメモ)

・被害の内容(メンタルクリニックの診断書など)

(直井)

 

 

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☆労働トラブルと弁護士保険☆

「フリーランス専用保険 報酬巡る訴訟費 補償」の見出しのもとに以下の記事(8月17日「日本経済新聞」)を目にした。

 

「損害保険ジャパン日本興亜は特定の組織に属さず働くフリーランスが企業から報酬を受けれとれなかった際、弁護士費用を補償する保険の取り扱いを8月中に始める。・・・保険によって誰でも安心して働ける環境作りを後押しする。・・・報酬の支払い遅延や一方的な減額、不払いなどの際に訴訟費用を保険金で賄えるようにする。契約者が弁護士と電話で相談できる窓口も用意する。保険金50万円の契約で年間保険料は5千円から。」

 

この記事の紹介する弁護士保険は、労働組合が組合員に提供しているサービスの一部を民間の保険で代替するものといえる。

労働者は使用者との交渉力の違いを労働組合という集団をつくることによって補う。

賃金切り下げ、残業代未払いなど使用者の不当・違法な取り扱いについても組合が窓口となって交渉する。

 

個人事業主として働くフリーランスには一般的には労働組合を利用する仕組みがない(個々の働き方によっては労働組合法上の労働者と認められる可能性はあるが、現実にはまだ高いハードルがある)。

弁護士保険は、司法制度(弁護士)を使うことによって、注文主の不当・違法な取り扱いからフリーランスを護ることを目的としている。

 

弁護士費用のハードルを下げることによって、裁判制度を利用しやすくする仕組みといえる。

泣き寝入りすることなく、異議を申し立てる者が少しでも増えればと期待したい。(直井)

 

 

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☆労働トラブルに係る陳述書☆

ほっとユニオンは労働審判申立手続のお手伝いをしています。

労働審判申立ての準備として、相談者には、まず、書証として提出するために事実の経過を時系列にしたがって記載した陳述書を作成してもらいます。

 

陳述書は、労働局にあっせん申請をする際にも経過を説明する資料として提出することができます。

また、あっせん申請書の「あっせんを求める事実及びその理由」欄や「紛争の経過」欄に「別紙記載のとおり」と記入して、陳述書を別紙として活用することもできます。

 

陳述書には、入社から(解雇など)本件トラブルに至るまでの主な出来事を事実の経過の順に項目をたてて記載します。

しかし、いきなり文書を作成するは大変なので、まず、以下のような簡単な箇条書き方式の時系列メモを作成することから始めるとよいです。

 

<時系列メモ>

(1)入社の経緯

①〇〇年〇月〇日、入社

②基本的な労働条件

賃金、労働時間、雇用期間の定めの有無など

(2)本件トラブルに至るまでの経緯

①〇年〇月〇日、・・・・・

②〇年〇月〇日、・・・・・

③〇年〇月〇日、・・・・・

(3)本件トラブル

①〇〇年〇月〇日、解雇言い渡し

②解雇理由、勤務成績不良、・・・

 

この時系列メモに、社長から「帰れ!明日から来なくていい!」と言われたなど具体的事実の肉付けをすることで陳述書を一応完成させる。

そして、ほっとユニオンは、一応完成した陳述書と雇用契約書など書面による証拠を元に労働審判手続き申立て書を作成することになります。

 

ここで「一応完成」といったのは意味があります。

現実の作業では、申立書を作成する作業の中で不充分だと気づいた点について、再度、陳述書を補充・訂正する作業をお願いしているからです。

 

時系列メモは、労働審判の申立ての準備だけでなく、各種労働相談機関の相談を受ける際にも有効です。

メモを元に説明すれば、相談者にとっても、相談を受ける側にとっても分かりやすく便利です。

 

ほっとユニオンでは、相談者に簡単な事実経過メモの持参をお願いしてしております。

簡単なメモでもあるとないとは大違いです。(直井)

 

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☆未成年者が提出した退職願の有効性☆

この4月に高校新卒で採用され、試用期間中であり研修期間中であった6月初旬には退職に追い込まれた未成年者A(18才)の父親からの労働相談があった。

未成年者Aは就職と同時に親元から独立して一人暮らしをしている。

会社はシステム構築を主な業務とする大手SI企業である。

 

民法の建前では未成年者は単独では有効に契約などの法律行為を行うことができない。

未成年者が労働契約を締結するには法定代理人(親権者)の同意を要する(民法5条1項)。

そして、同意を得て未成年者が締結した労働契約であっても、親権者らは、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向かってこれを解除することができる(労基法58条2項)。

 

他方、未成年者が労働契約を親の同意なしに単独で有効に解約できるか否かについては労基法にも民法にも明文の規定はない。

しかし、未成年者が親の同意を得て労働契約を締結した場合は、未成年者が営業を許された場合の規定(民法6条)を準用して、労働契約上の諸行為につき未成年者は「成年者と同一の行為能力を有する」と解されている。

 

そうとすると労働契約の解約は未成年者が親の同意なしで有効に行いえると解される。

本件については、未成年者Aが退職願いを提出していることから、退職願い提出の任意性が争点となった。

 

未成年者Aは新しい職場になじめず体調を崩し5月の連休以降休みがちになり、心配した研修担当者のアドバイスもあり心療内科を受診した。

診断の結果、医師は抑うつ状態にあることから療養のため3か月間の休養を勧めた。

 

未成年者Aがその旨を会社に報告したところ、人事担当者は直ちに産業医面談を設定し、産業医面談において、産業医は3か月程度の休養の必要性を認めた。

産業医面談に同席した人事担当者は、試用期間中の長期病気休職は認められないこと、及び解雇されると次の就職に不利になることから、自主退職以外の選択肢がないことを未成年者Aに述べ、早期に自主退職を決断するうように促した。

 

そして、産業医面談から1週間も経たない時期に設定された退職手続きの場において、未成年者Aは、人事担当者に促されるままに、「一身上の都合による退職」であることを記載した「退職願」、「会社に関係のない自己都合退職」であることを記載した「退職理由書」などに署名押印のうえ提出した。

 

以上の退職の経緯からすれば、会社の対応は違法とまではいえないとしても、いまだ試用期間中の高校新卒採用の未成年者にはいささか酷に過ぎる。

会社には新規採用職員を長い目で見守り育てる姿勢が感じられない。

 

むしろ、大量採用した新卒の落ちこぼれを効率よく切り捨てるというブラックさを感じる。

退職願いを提出する前に相談に来てもらえれば別の解決もあったのではないかと悔やまれた。(直井)

 

 

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☆社会保険に加入しない使用者☆

会社が社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入してくれないとの労働相談があった。

会社は従業員3名の小規模会社で、相談者は勤続4年で1年間更新の有期雇用者である。

社長に社会保険の加入を頼んだら、「うちは誰も社会保険に加入していない、どうしてもというのなら辞めてもらう以外ない」との話しであった。

 

年金事務所に相談にいったら、会社が任意に加入に協力してくれなければ、会社を指導して加入手続きを進めることは時間もかかり事実上困難だといわれたという。

しかし、従業員がどんなに少なくても、当該会社は株式会社であることから社会保険の強制適用事業所にあたる。

この年金事務所の相談対応は、不親切かつ不正確だといわざるを得ない。

年金事務所は、加入指導に応じない会社に対しては立ち入り検査を行い(厚生年金保険法100条)、調査に基づく認定により強制加入手続きを実施する権限を有している。

会社が厚生年金保険・健康保険の加入手続きをしない場合は、従業員が直接日本年金機構(年金事務所)に被保険者資格の確認請求をして、会社を加入さすことができる。

 

通常は、健康保険及び厚生年金保険の被保険者の資格取得及び資格喪失は、適用事業所の事業主の届出により行われ、保険者の確認によってその効力を生じる。

しかし、事業主が届出を怠っている場合は、後日、被保険者が保険給付を受けるときに不利益を被ってしまう場合があるため、被保険者又は被保険者であった者が、自らも保険者へ被保険者資格の確認を請求できるようになっている(厚生年金保険法31条、健康保険法51条)。

 

確認請求には所定の「厚生年金保険・健康保険被保険者資格確認請求書」のほか、年金事務所による調査を円滑に行うため、雇用契約書、給与明細などの証拠書類を提出する必要がある。

なお、過去に遡っての確認請求は、原則2年間とされている。

 

役所相手に具体的な対応を求めるためには、相談だけであきらめず、申請など正式な手続きをすることを勧めます。

ひとりで手続きを進めることが不安な場合は、社労士ユニオンであるほっとユニオンにご相談ください。(直井)

 

 

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