☆社会保険に加入しない使用者☆

会社が社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入してくれないとの労働相談があった。

会社は従業員3名の小規模会社で、相談者は勤続4年で1年間更新の有期雇用者である。

社長に社会保険の加入を頼んだら、「うちは誰も社会保険に加入していない、どうしてもというのなら辞めてもらう以外ない」との話しであった。

 

年金事務所に相談にいったら、会社が任意に加入に協力してくれなければ、会社を指導して加入手続きを進めることは時間もかかり事実上困難だといわれたという。

しかし、従業員がどんなに少なくても、当該会社は株式会社であることから社会保険の強制適用事業所にあたる。

この年金事務所の相談対応は、不親切かつ不正確だといわざるを得ない。

年金事務所は、加入指導に応じない会社に対しては立ち入り検査を行い(厚生年金保険法100条)、調査に基づく認定により強制加入手続きを実施する権限を有している。

会社が厚生年金保険・健康保険の加入手続きをしない場合は、従業員が直接日本年金機構(年金事務所)に被保険者資格の確認請求をして、会社を加入さすことができる。

 

通常は、健康保険及び厚生年金保険の被保険者の資格取得及び資格喪失は、適用事業所の事業主の届出により行われ、保険者の確認によってその効力を生じる。

しかし、事業主が届出を怠っている場合は、後日、被保険者が保険給付を受けるときに不利益を被ってしまう場合があるため、被保険者又は被保険者であった者が、自らも保険者へ被保険者資格の確認を請求できるようになっている(厚生年金保険法31条、健康保険法51条)。

 

確認請求には所定の「厚生年金保険・健康保険被保険者資格確認請求書」のほか、年金事務所による調査を円滑に行うため、雇用契約書、給与明細などの証拠書類を提出する必要がある。

なお、過去に遡っての確認請求は、原則2年間とされている。

 

役所相手に具体的な対応を求めるためには、相談だけであきらめず、申請など正式な手続きをすることを勧めます。

ひとりで手続きを進めることが不安な場合は、社労士ユニオンであるほっとユニオンにご相談ください。(直井)

 

 

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☆試用期間中の社保なしは違法!☆

労働相談を受ける際、まず、労働条件通知書などにより契約の基本的な内容を確認することにしている。

小規模な企業では試用期間中は社会保険に加入しないとの取り扱いをする例が少なくない。

 

「臨時に使用される者」を社会保険の適用除外とする規定(厚生年金保険法12条)についての使用者の誤解ないし悪用と思われる。

試みに使用される者は、勤務の永続性が前提となっているので、「臨時に使用される者」とは性質が異なる。

 

もっとも、私が現実に対応する相談者は試用期間中の社会保険の不適用を問題として相談に来るのではなく、試用期間中の使用者による恣意的な解雇を問題として相談に来るものがほとんどである。

なぜ、社会保険の不加入を問題として企業に怒らないのだろうか。

 

そこには、昨今話題となっている年金の老後資金2,000万円不足問題以前の現状がある。

安定した職場で働けない労働者には老後の年金生活を考えるゆとりさえないのである。

 

老後の年金生活で2,000万円の蓄えが必要であるとの試算のモデルとなっているのは、40年間厚生年金に加入し安定した雇用機会に恵まれた労働者である。

誰もが安心して働ける安定した雇用機会の保証こそが急務である。(直井)

 

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☆転職による社会保険の空白期間☆

転職のため前の会社を退職して次の会社へ就職するまで1か月間の空き期間がある。

そのため社会保険(健康保険)についても1か月間の空白期間が生じることになるが、この1か月の空白期間に何もしなかったらどのようなデメリットがあるかという電話相談があった。

 

よく知られているとおり、我が国では国民皆保険制度をとっている。したがって、職場の健康保険の資格がなくなった場合、原則として国民健康保険に加入することが義務づけられている。

しかし、加入手続きは、自動的にされるわけではない。

加入の届出は加入の資格が発生した日から14日以内に行うことが義務づけられている。

 

相談者の質問は加入の届け出をしないでそのままにしていたら、どのような不利益があるかいうことのようである。

当然ながら、その間、公的な医療保険制度の恩恵を受けられない。

相談者はこのことは承知のうえで質問している。

とりあえず病気になる可能性は少ないから、保険料を節約できるならばそれはそれで得だと考えているようだ。

 

しかし、加入手続きをほったらかしていても、強制加入制度であることから結局は遡って加入する取り扱いとなり、保険料も遡って徴収されることになる。

そして、保険料を遡って支払っても、加入手続きを怠っていた間に病気にかかり医療機関の受診をしたときの医療費は全額自己負担のままであるというサンクションが待っている。

もっとも、届け出が遅れた理由がやむを得ないと判断される場合は別である。

 

そもそも社会保険は共助の仕組みであり、個別的・個人的な損得の観点で考えるべきものではない。

相談者には速やかに加入手続きをすることを薦めた。(直井)

 

 

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