☆退職勧奨と自主退職☆

使用者は争いを残さないために、または、ハローワークの助成金を申請しているなどの理由から、辞めてもらいたい従業員に対して、明確な解雇を言い渡さないで、暗に退職を促すことがある。解雇されるとあなたの経歴に傷がつく、自主退職のほうが転職するのに有利だなどと親切ごがしに言ったりする。

 

退職を勧奨された労働者は辞めることには異議はなくても自主退職を拒否することがある。

自主退職(自己都合退職)は失業給付の請求などで不利益を受ける場合があるというネット情報の広がりのためである。

望んでいない自主退職を断固拒否することは賛成である。

明確に解雇を言い渡されるまで断固出勤しつづけるという選択である。

 

でも、職場に居づらいことから、出勤せずの状態が続き宙ぶらりんの状態になっている者もある。

他方、会社は、従業員が退職した場合、雇用保険被保険者資格喪失届けともに雇用保険被保険者離職証明書をハローワークに提出する義務がある。その際、ハローワークから退職届けなど「退職理由を確認できる書類」を添付資料として要求される。

従業員の退職届けをハローワークに添付書類として提出できないことから、会社がハローワークでの処理を先延ばしにすることもある。

 

このように自主退職したのか解雇されたのか曖昧な状態で相談にくる労働者がある。

自主退職する意思がないならば、まず、退職したわけではないこと及び体調不調などの理由で出勤できない状態であることを会社に報告することを勧める。

無断欠勤自体が解雇理由になってしまうからである。

 

相談者が職場で置かれている曖昧な状態を明確にし、その後に具体的な解決方法の相談に入ることになる。(直井)

 

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☆高齢の有期雇用社員の継続雇用☆

正社員の65才までの雇用継続を定める高齢者雇用安定法の下、60才定年制を維持したままで定年退職後は更新期限を65才までとする有期雇用を採用する企業は少なくない。

有期雇用社員の更新の上限も正社員の定年退職者の雇用保障と同じく65才までと定めるものもある。

 

そこに①有期雇用の無期転換ルール(5年ルール)を定める労働契約法18条(20154月施行)及び②無期転換ルールの特例として、定年退職後に有期雇用契約で継続雇用される高齢者は無期転換ルールの適用を受けないと定める有期雇用特別措置法(20194月施行)が加わることにより高齢の有期雇用社員の位置は複雑になった。

60才以上に至った有期雇用社員の無期転換権を制限するために60才までに無期転換した者だけを60才の時点で有期雇用社員として継続雇用し65才までの更新を認めるという事例が発生する。

 

以下に紹介する最近の相談事例はまさに上記の事例であった。

 

この企業では従前は契約社員も希望すれば65才まで更新が認められていた。

5年で無期転換権が発生するという労働契約法18条の新設を受けて変更された新しい制度は以下のとおりである。

    期転換をしないまま60才を迎えた契約社員は雇い止めする。

    期転換した契約社員については60才時点で正社員の定年退職者と同様に有期雇用に戻し、有期雇用社員として65才までの雇用を保障する。

 

一見すると特に契約社員に不利益は発生しない。

60才までに無期転換するかしないかは本人の自由な意思の結果だからである。

 

相談者は50代後半に入社したことから60才前に無期転換の要件である5年の勤務は満たさない。

無期転換することができないことから有期雇用社員のまま60才を迎えることになる。

60才で雇い止めとなる。

就業規則改正前は65才まで有期雇用社員として継続勤務の可能性があったのにその期待は失われた。

どうにかならないかとの相談であった。

 

 

簡単に言えば、従前事実上保障されていた65才までの有期雇用の更新への期待が、有期雇用社員の保護のため無期転換権を認めた法制度の新設によって奪われてしまうという皮肉な結果を生じたということである。(直井)

 

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☆会社都合退職と自己都合退職☆

相談内容を分類してみると、納得できない理由で解雇されたり、退職を迫られている人からの相談が相変わらず多い。

会社との交渉において何を要求したいか相談者に尋ねると、多くは解雇撤回の交渉ではなく退職を前提とした退職条件の交渉を望む。

少人数の職場では、一旦悪化した社長や上司との人間関係の修復が困難なため、雇用の継続や復職を求めることが事実上難しいという事情がある。

 

退職条件として何を要求するかと尋ねると、転職にともなう生活費の補償などの金銭要求を別とすると、「会社都合」の退職にしてくれというのが多い。

ハローワークでの失業手当の給付日数を考慮してのものと思われる。

 

しかし、給付日数を決める大きな基準は、年齢・勤続年数を別とすれば、「特定受給資格者」(ないし特定理由離職者)に該当するか否かである。

特定受給資格者とは、離職理由が倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた受給資格者をいう。

やむを得ない理由のある退職の場合は、解雇された場合と同じく特定受給資格者となる。

具体的には、長時間労働、上司・同僚によるパワハラ・セクハラ、退職勧奨などにより退職を選択せざるを得なかった特別の事情が認められる者も特定受給資格者となる。

 

たとえ「一身上の都合により退職する」との退職願いに署名・押印したとしても、特定受給資格者(ないし特定理由離職者)に該当するか否かをハローワークに相談してみることをすすめたい。

(直井)

 

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☆「追い込まれた退職」後の憤懣☆

毎月の残業が60時間から80時間と続き心身ともに疲弊していた。

直属の上司に残業時間の削減など職場環境の改善を求めたが、口先だけで一向に改善されない。

年休もとれない状態で行政など外部の相談機関に行く時間も気力も体力もない。

 

回復不可能なダメージを受けるおそれがあるところまで追い込まれ、ぎりぎりのところで退職を申し出て辞めることにした。

3か月程度は呆然と過ごしたが、体調が回復し気持ちも落ち着いてくると、職場での理不尽な取り扱い、何で辞めなければならなかったのだろう、と納得しきれないもやもやした気分がわいてきた。

 

そしてほっとユニオンに相談にきた。

相談の趣旨は転職など前に進むためには、過去の職場でのことに気持ちの区切りをつけたいということであった。

ほっとユニオンは使用者とのトラブルを抱えた労働者の駆け込み寺です。

 

本件は、辞めざるを得ない状態に追い込まれことに対して、安全配慮義務違反を理由として使用者に対して損害賠償請求が可能な案件である。

しかし、相談者は使用者を相手に訴えるとか交渉するとかまでは考えていない。

自分の窮状を知りながら何もしてくれなかった職場の上司・同僚に対する遣り切れない気持ちを聴いて欲しいということのようであった。

 

 

職場に身近な相談先としての労働組合があったら辞めなくても済んだのではないかと残念に思う。(直井)

 

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