☆承諾期限前の採用申込みの撤回☆

ほぼ決まったと考えていた採用が突然撤回されたという相談があった。

 

ネット上での募集に応募し、会社の面接を経て、会社から入社依頼の連絡がメールであった。

他の応募先の面接が予定されていたこと及び採用条件の説明が大まかなものであったことから、相談者は具体的な採用条件の提示を求めるとともに1週間の回答の猶予を依頼したところ、会社から具体的な採用条件(所属部署、正社員であること、給料および手当、勤務時間、休日、賞与など)の連絡とともに、入社の可否についての回答を1週間待つとの連絡があった。

相談者は提示された採用条件について、労働基準法の定めとの関係で疑問に感じたことをメールで質問したところ、この質問が気に触ったのか、会社社長から「入社頂きたい旨の連絡を撤回する」旨のメールがきた。

 

この会社の対応に納得できない相談者は、金銭補償の要求を伝えたが、会社は労働契約がいまだ成立していないことを理由に金銭補償を拒否した。

というのが相談者の話す経緯である。

 

確かに、上記経緯からすると、内定など労働契約が成立しているとは言い難い面があるのは事実である。

しかし、民法523条は、承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができないと規定する。

すなわち、会社が承諾期限前に契約の申込みを撤回することは許されない。

 

したがって、相談者が期限までに承諾の回答をすれば労働契約は有効に成立することになる。

もっとも、本件ではすでに承諾期限が過ぎてしまっているのでこの対応は取りえない。

しかし、違法な申込み撤回を理由に損害賠償を求めることは可能である。

 

この場合請求可能な損害は以下のとおりである。

・積極的損害:採用面接など採用手続きに相談者が支出した金銭・労力など。

・消極的損害(逸失利益):新たな就職先が決まるまでに空白の日数を費やすことになったことによる失った賃金相当額。

・精神的損害(慰謝料):違法な申込み撤回で被った精神的被害の賠償。(直井)

 

 

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☆契約書の交付を求めたら、契約は白紙に!☆

サッカークラブから指導員としての採用の申し込みを受けて、自宅のある九州から関東のクラブ事務所を訪問し面接を受けた。相談者が口頭で説明を受けた労働条件を記載した労働契約書の交付を求めたところ、そのような要求をする者とは信頼関係が持てないとして、突然、契約を白紙に戻されたとの相談があった。

 

労働契約は口頭による約束であっても有効に成立します。

契約書の交付は労働契約の成立要件ではありません。

しかし、契約書は、労働条件を巡る採用後のトラブルを防止するうえで重要なものです。

 

労働契約書の交付を求める相談者に対し、面倒な権利主張をするトラブルメーカーになる恐れがあると感じて、クラブ側は契約を白紙に戻したと推測できる。

しかし、合意した契約内容を記載した労働契約書(ないし労働条件通知書)の交付を求めることは法律が定める労働者の当然の権利であり、労働契約書を交付することは使用者の義務でもある。

 

労働基準法(労基法15条、労基規5条)は、労働契約を巡るトラブルを事前に防止し労働者を保護するために、①契約期間、②就業の場所・従事する業務、③勤務時間・休日、④賃金など基本的な労働条件については、書面を交付する方法によって明示することを使用者に義務づけている。

労働基準法の趣旨からすれば、契約書の交付を拒否して契約を白紙に戻したクラブ側の対応は違法といわざるを得ない。

 

労働契約がすでに成立していたと解される場合には、契約破棄の無効を主張して地位確認とバックペイを請求して裁判を提起することが可能だ。

労働契約の成立に疑問がある場合でも、契約の成立を期待して遠方から出向いた相談者の利益は守られるべきだから、交通費など契約締結の過程で相談者が支出した経費をクラブ側に損害賠償請求することは可能だ。

 

労働基準法の規定にもかかわず、契約書(ないし労働条件通知書)を交付しない使用者は少なくない。

とりわけ、個人経営の小規模な会社においては多くみられる。

弱い立場にある労働者側からは言い出しにくいことがらであるので、労基署の積極的な指導・啓発活動を期待したい。(直井)

 

 

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☆アスペルガーを理由とする内定取消☆

アスペルガーであることを会社に伝えたら内定が取り消されたという労働相談を受けた。

内定決定後の内定者合宿への参加など予定された手続きも済み後は入社予定日を待つだけの状態であった。

 

相談者は、日頃から気になっていたことがあったので、たまたま精神科を受診したところ、アスペルガー症候群であるとの診断を受けた。

会社の担当者にその旨を伝えたところ、担当者から口頭で内定を取り消す旨の通知を受けたとのことである。

 

アスペルガーを理由とする内定取消ならば、会社の対応は違法・不当であるといわざるを得ない。

相談者には内定取消の理由を文書でもらうようにアドバイスした。

 

でも、なぜ、間近に入社を控えた相談者が受診結果をそのまま会社に伝えたのか疑問を感じた。

普通は自分に不利になる可能性のある情報は隠したがるものである。

プライバシーにかかわることでもある。

 

その疑問を率直に相談者に尋ねたら、嘘をつくことが苦手なのだという回答であった。

「正直すぎること」は、アスペルガー症候群の特徴のひとつといわれる。

コミュニケーションにおいて「空気が読めない」という欠点であると評価されることが多い。

 

先日、国連で環境問題について演説したスウェーデンの16才の高校生であるグレタさんのことを思い出した。

彼女は自らがアスペルガー症候群であることを公表している。

グレタさんは、「アスペルガーは病気ではなく、ひとつの才能です。・・・アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう。」とfacebookで発言している。(直井)

 

 

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☆泣き寝入りしないで本当に良かった!☆

使用者による解決金の振込があったことの報告とともに、泣き寝入りしないで本当に良かった!とのお礼メールがAさんからほっとユニオンに届いた。

 

小さなクリニックの採用手続きを巡るトラブルだった。

Aさんはクリニックの面接・お試し勤務を経て、医療事務・受付担当として採用決定の連絡を電話で受けた。

採用決定から就労開始日まで3週間ほど間があった。

就労開始日の1週間ほど前になって、クリニックから別の人に決めたから来なくていいと突然電話で言われた。

 

解決までの道筋は決して平坦ではなかった。

Aさんの相談を受けたほっとユニオンは、まず、団体交渉を申し入れた。

しかし、クリニック側の窓口となった社労士の対応が堅く交渉は頓挫した。

次に労働審判の申立てを行って、ようやく解決に至ったもので、解決までに6か月を超える期間を要した。

 

労働審判においては弁護士費用の負担を節約するためほっとユニオンは本人申立を勧めている。

申立て準備として、Aさんは事実経過についての陳述書を作成し、それをもとに、ほっとユニオンが労働審判の申立書の作成作業を担当した。

 

審判の当日は、ほっとユニオンの執行委員が付き添うが、審判室には同席できないため、付き添いは待合室で待つことになる。

Aさんは一人で審判室で裁判官である労働審判官に受け答えをしたのである。

 

解決に至るまでの道筋は、Aさんにとっても大きな負担であったはずだ。

それでも「泣き寝入りしないで本当に良かった!」といってもらえれば、ほっとユニオンとしては応援のし甲斐があったと思っている。(直井)

 

 

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