☆労働トラブルの闘い方☆

第12章   試用期間満了時に、本採用を拒否された!


試用期間満了時に本採用を拒否された

やっとのことで入社できたのに、試用期間の満了に伴い本採用を拒否されてしまった!まさか自分が本採用を拒否されるとは思ってもみなかった。これからどうしたら良いのかわからない・・・。納得できない・・・。会社に対して何か対抗できないのか・・・。

  このような、試用期間満了時に本採用を拒否されたという相談も後を絶ちません。

相談者の話を聴いてみると、「試用期間中に特に大きなミスをした覚えはなく、何故自分が本採用を拒否されたのかわからない。」「強いて理由を挙げれば、上司とウマが合わなかったのかも知れない。」というように、本採用拒否の理由が曖昧なケースや、「確かに試用期間中に多少のミスはあったが、こんな程度のことで本採用が拒否されるのは納得がいかない。」というように、本採用拒否の理由はわかっているが、軽微なミスに対する処分としては行き過ぎているのではないかとの疑念を抱かざるを得ないようなケース等が多く見受けられます。

 

 ところで、試用期間の法的性格については、最高裁判決(三菱樹脂事件・最大判昭和481212民集27111536頁)によれば、個々の事案に応じて判断すべきであるとしつつ、「本採用拒否は留保された解約権の行使(すなわち解雇)にあたるため、客観的に合理的理由があり社会通念上相当として是認できる場合にのみ許される」とされています。

本採用拒否が解雇である以上、解雇予告規定(労基法20条)及び解雇権濫用法理(労契法16条)の適用があるのは当然であり、そして、このことは新卒者のみならず中途採用者にもあてはまるのです。

 

試用期間満了に伴う本採用拒否に対して納得が行かない場合、法的救済としては、正規従業員の法的地位の確認ないし保全を求めていくことになります。

しかし、労働者が本採用取消し通知を受けながらこのまま放置して出社しないような場合には、会社による本採用取消しに対する黙示の承認が存在する等の弁解の余地を使用者に与えることにもなりかねません。

 

本採用拒否に対し納得できない場合には、とりあえず「本採用取消し無効確認通知」を出しておくなどの対応が肝要です。そして、解決にあたっては、行政機関の「あっせん」や労働組合による「団体交渉」などの対応が考えられます。

まずは、専門家に相談して、どのような方法で解決を図っていくのが良いか相談してみましょう! 

 


<こんなふうに対応する>

①  会社に対し、「解雇理由証明書」を交付してもらう。

 ⇒労働基準法第22条2項に基づき、書面での交付を求めることで、会社は「解雇理由証明書」を交付する義務が生じます。

 ②  本採用拒否の理由について納得いかない場合は、「納得できません」と明確に意思表示をする!!

 ⇒本採用拒否(すなわち解雇)が適法とされるためには、「客観的に合理的な理由」が必要です。この「客観的に合理的な理由」の判断において裁判所は、正社員に対する解雇よりは緩やかであり、内定取消しの場合よりは厳格に判断する傾向にあります。

 ③ 会社(人事担当者)とのやり取りについては、慎重に対応するようにする。

 ⇒会社は、本採用拒否の通告をする場合、その場で「30日分の手当」を支払うことを条件に「退職届」を書くように誘導する場合があります。

 もし納得が行かない場合には、安易に「退職届」を提出せず、一度持ち帰り、冷静に考えて後悔のないよう行動して行きましょう。

 そして、当事者間での解決が難しい場合には、「労働相談カフェ東京」(03-5834-2300)に電話相談し、アドバイスを受けましょう。電話相談は無料、受付時間は平日9時~18時です!

 


<本採用取消し無効確認の通知方法を知っておきましょう!>

  

〇〇株式会社

代表取締役 〇〇〇〇様

 

本採用取消しの無効確認通知

 

 私は貴社に、平成〇〇年〇〇月〇〇日に入社し、〇〇の業務に従事しておりましたが、平成〇〇年〇〇月〇〇日に、貴社より、試用期間満了の平成〇〇年〇〇月〇〇日をもって労働契約を解消する旨の解雇通告を受けました。

 本採用拒否の理由は「・・・・・・・・・・」ということですが、私にはご指摘の件について心当たりがありません。仮に形式的に貴社が指摘する本採用拒否に該当する事実があったとしても、それらは試用期間中にOJT等の適切な指導があれば容易に改善できることです。私は、試用期間中に会社から「本採用拒否に該当するような問題行為があったことに対する」注意を受けたこともなければ、仕事に対する適切な指導を受けたこともありません。

 したがって、貴社が主張する本採用拒否の事由は、「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」ものとは、到底認められません。

 よって、今回の私に対する本採用拒否は無効であると思慮しております。つきましては、私は、貴社に対し、今回の私に対する本採用拒否を撤回するように求めます。

 

 私としましては、本採用が無効であるとの立場から、試用期間満了する平成〇〇年〇〇月〇〇日以降も就労する予定です。仮に貴社がこの就労を妨害する場合には、私の就労が貴社の責めに帰すべき事由により出来なくなるため、民法第536条2項に基づき、未払賃金全額の支払いを求めるべく、労働組合における団体交渉、その他民事訴訟等の法的手段に訴えざるを得ないと考えておりますのでご承知おき下さい。

 

 なお、回答につきましては、本書面到達後、2週間以内に書面にて頂きますようお願い申し上げます。

 以上、ご通知申し上げます。

 

平成〇〇年〇月〇日       

東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

 氏名 〇〇 〇〇  印 

 

 

※この請求書のコピーを取っておくこと

※郵送する場合は、配達証明郵便など記録の残る方法で送付すること

※あくまでも記載例の見本です

 

 

              (労働紛争解決アドバイザー 横川)