☆解雇を争っている場合の公的医療保険の取扱い☆

会社との間で解雇を争っている中で国民健康保険の加入手続きをすることは退職を認めることにならないか、また、そのような場合でも健康保険の被保険者証を返えさなくてはならないのか、との相談があった。

 

解雇について争う以上、国民健康保険の加入手続きをする必要はないと考えてしまいがちです。

しかし、会社が健康保険の被保険者資格喪失届を提出すれば、仮に労働者が解雇を争う手続きを行っていても、保険者(全国健康保険協会、各種健康保険組合など)は、一応資格を喪失したものとして届出を受理し、被保険者資格は消滅することになります。

 

したがって、労働者は、たとえ解雇を争っていても、退職した場合と同様、①国民健康保険に加入するか、②健康保険の任意継続被保険者となるか、③家族の健康保険(被扶養者)に加入するか、のいずれかの手続きをとる必要があります。

国民健康保険の加入手続きをすることと解雇を認めることとは、何ら関係がありません。

 

一方、会社は、被保険者証を労働者から回収して保険者に返納する義務があり(健康保険法施行規則51条)、保険者に被保険者資格喪失届を提出する際、被保険者証を添付しなければなりません。

そこで会社は被保険者証の返還を労働者に求めます。

 

健康保険法には、労働者が健康保険被保険者証を使用者に返還する義務を定める規定はありません。

しかし、労働者が被保険者証の返還を拒んでも、会社は被保険者証添付不能届を添付して被保険者資格喪失届をすることができます。

 

また、解雇日の翌日(被保険者資格喪失日)以降に健康保険被保険者証を使用して医療機関で診察を受ければ、後日、保険者から保険者負担分を請求されることになります。

 

解雇に納得できないことから被保険者証を会社に返したくないという気持ちは分かります。

しかし、あまり実益のない対応です。(直井)

 

 

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☆転職による社会保険の空白期間☆

転職のため前の会社を退職して次の会社へ就職するまで1か月間の空き期間がある。

そのため社会保険(健康保険)についても1か月間の空白期間が生じることになるが、この1か月の空白期間に何もしなかったらどのようなデメリットがあるかという電話相談があった。

 

よく知られているとおり、我が国では国民皆保険制度をとっている。したがって、職場の健康保険の資格がなくなった場合、原則として国民健康保険に加入することが義務づけられている。

しかし、加入手続きは、自動的にされるわけではない。

加入の届出は加入の資格が発生した日から14日以内に行うことが義務づけられている。

 

相談者の質問は加入の届け出をしないでそのままにしていたら、どのような不利益があるかいうことのようである。

当然ながら、その間、公的な医療保険制度の恩恵を受けられない。

相談者はこのことは承知のうえで質問している。

とりあえず病気になる可能性は少ないから、保険料を節約できるならばそれはそれで得だと考えているようだ。

 

しかし、加入手続きをほったらかしていても、強制加入制度であることから結局は遡って加入する取り扱いとなり、保険料も遡って徴収されることになる。

そして、保険料を遡って支払っても、加入手続きを怠っていた間に病気にかかり医療機関の受診をしたときの医療費は全額自己負担のままであるというサンクションが待っている。

もっとも、届け出が遅れた理由がやむを得ないと判断される場合は別である。

 

そもそも社会保険は共助の仕組みであり、個別的・個人的な損得の観点で考えるべきものではない。

相談者には速やかに加入手続きをすることを薦めた。(直井)

 

 

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