☆小ユニオンの弱点・陰湿ないじめ退治☆

3年前にリストラ退職勧奨を断って以来、2度の転勤や最低評価の人事考課が続いたことによる減給、些細なミスを大袈裟にしての叱責、廻りにアイツはダメなやつだと言いふらすことなどの陰湿な嫌がらせが絶えない。

少しでも嫌がらせをやめさせることができないかとの相談があった。

 

相談者が弁護士に相談したところ、法に触れないように慎重に考えた上での意図的な組織ぐるみの嫌がらせと考えられること。

悪質ではあるが、法的な対応は難しいとのことであった。

そこでユニオンの団結の力で多少なりとも会社を牽制できないかと期待しての相談であった。

 

社内のいじめ退治の一番効果的な方法は職場に愚痴をいえる仲間を作ることです。

しかし、社内に何の足場のない社外の組織であるユニオンにはそのようなお手伝いは難しい。

 

また、不当解雇などの個別的労働紛争を主に取り扱う小規模なユニオンは、会社との交渉において、労基法、労働契約法など労働法規を交渉の武器として会社の違法不当な行為を攻撃するのを常とする。

不当ではあるが違法とまではいえない社内の陰湿な嫌がらせ退治についての団体交渉は困難だ。

 

嫌がらせ行為が違法と評価されるほど強く明確なものならば、裁判を見据えて強い態度で団体交渉に臨むことができる。

そうでない場合、社内においては当該一人の組合員のみを組織するにすぎないユニオンは職場内での団結の力の裏付けを欠く交渉を強いられることになる。

 

ユニオンはしばしばその組織力の弱さを補う補完的な闘争手段としてマスコミを味方につけ、当該個別案件を社会問題化して闘う手法をとる。

会社が著名な大企業であるとか、違法行為が世間の目を引くものであるときは有効であるが、本件相談には不向きだった。

会社が法に触れないように注意して行う陰湿ないじめ行為については、団体交渉をしても、そのような事実はない、人事権の範囲の行為だ、上司による適法な指導だ、などと言い逃れられると、追求に詰まってしまうことが多い。

 

なお、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が2020年6月に施行される(ただし、中小企業は2022年4月施行)。

しかし、同法は、端的にパワハラを違法行為として罰則をもって禁止するものではなく、苦情などに対する相談窓口の整備などパワハラ防止のための雇用管理上の措置を企業に義務づけるものに過ぎないことから、この法律が施行されても直ちに本件相談者の希望にそうことは期待できない。(直井)

 

 

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☆最後の給与は会社に取りに来い!☆

円満に退職したのではなく、退職時になんらかのトラブルがあった場合、退職後、会社に対して最後の給料の支払いを求めると、「会社に取りに来い」といわれることがある。

会社の嫌がらせである。

会社に取りに行くのが怖いので、金融機関の口座への振り込みを求めたが断られたとの相談があった。

 

従前の給料が金融口座への振り込みという方法で支払われていた場合は、従来どおりの支払い方法による支払いを求めることは法的に十分根拠のある要求だ。

振り込み拒否は賃金不払いと評価され、労働基準法(24条)違反として労働基準監督署へ違法行為の是正を求める申告(労基法104条1項)をすることができる。

 

問題は従前から会社での手渡しの方法により給料が支払われていた場合だ。

そのような場合、労働基準監督署に相談にいっても、会社が給与の支払い自体をしないと言っているわけではないとして、取り合ってくれないことが多い。

 

しかし、退職の原因が小規模な事業所内での経営者のパワハラ・セクハラであり、職場に行くことにより更なる被害を受ける危惧があるときは別に考える必要がある。

そう解さないと、労働者の泣き寝入りを狙う会社の思い通りになってしまう。

 

そもそも、会社の給料支払い債務が会社の所在地で労働者が取り立てる「取立債務」と解されている理由は賃金債権の発生原因の性質からだ。

労働契約における「賃金債権」は、労働者が使用者の下で労働力を提供し、その労働力を提供した対価として「賃金」の支払いを求める権利である。

賃金債権の以上の内容から、使用者の賃金支払い債務は、一般的には、当事者間の合理的な意思解釈として、労働者が労働力を提供した「使用者の営業所等」で賃金の支払いをする「取立債務」と解されているのだ。

会社に取り立てに来いとの会社の主張の支える理屈となる。

 

しかし、賃金を受け取りに会社に行くことにより更なるセクハラ・パワハラの被害を受ける危険があるなど特別の事情がある場合は別に解されるべきだ。

そのような事情が認められる場合は、労働者が、会社での受け取りではなく、口座振り込みによる支払いを求めるのは当然の権利といえる。(直井)

 

 

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☆業務委託で働くマッサージ師の疑問☆

マッサージサロンとの間で締結した業務委託契約に基づき働くマッサージ師から相談があった。

お客からサロン運営者である本部にクレームがあり、その調査のため3週間サロンで働くことを禁じられた。

 

調査の結果、問題となる行為は認められなかったことから、今は業務に復帰しているのだが、働けなかった3週間の休業補償がないとの相談だ。

報酬は売上げに見合った歩合制ではあるが、シフトに従って週4日勤務し、サロンで働く時間帯も決められている。

 

労働基準法の適用があれば、最低限6割の休業手当(同法26条)が補償されることになる。

取り交わした業務委託契約書には、労働基準法ほか労働関係法の適用を受けないことを明記した条項がある。

しかし、本件のような「業務委託契約書」を取り交わしていたとしても、そのこと自体から直ちに労働基準法上の労働者に当たらないと判断されるわけではない。

 

労働基準法上の「労働者」であるか、業務委託契約における独立した「個人事業主」であるかは、契約の形式いかんにかかわらず、実質的に判断される。

すなわち通常の契約の当事者間における対等な関係ではなく、実質的に契約の相手方に従属している関係(「使用従属性」)があれば労働基準法上の労働者であると判断されることになる。

 

「使用従属性」が認められる具体的な要素としては以下のものがある。

・仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がないこと、

・業務遂行上の指揮監督の程度が強いこと、

・勤務場所・勤務時間が拘束されていること、

・報酬の労務対償性があること、

・機械・器具が会社負担によって用意されていること、

・専属制があること、

 

相談者には以上のことを説明したうえで、労働基準法上の労働者に当たる可能性が高いので諦める必要はないことをアドバイスした。

労働者保護法の規制を免れるため労働者を個人事業主として業務委託契約で使用する使用者はあとをたたない。

多様な働き方(=多様な働かせ方)のほとんどは労働者のためのものではなく、使用者のためのものだ。

 

コロナ一斉休校がらみの休職者助成制度として、政府は、労働契約に基づく労働者(上限1日8,330円)とは別にフリーランス(個人事業主)向けの低額枠(定額1日4,100円)を用意するようだ。

政府の一斉休校要請に伴う休職者への補償を目的とする措置ならば、契約の形式で区別することにどの程度の合理性があるのか疑問だ。(直井)

 

 

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☆コンビニ日雇い派遣の嘆き☆

コンビニで「日雇い派遣」として働いているという労働者から相談電話があった。

 

たまたま同じ時間帯で勤務についたその日限りの同僚の自分に対する態度への不満・不平であった。

初対面なのに最初のあいさつがなかったこと、同じコンビニでも店ごとに作業の仕方が微妙に異なるのに仕事の指図の仕方が不親切なこと、客に聞こえる大きな声でミスを指摘したことなどなど。

ほとんど愚痴である。

 

同じ職場で働き方の異なる者が混在していることから発生した問題といえる。

働き方が異なればそれぞれ利害が対立する。

その結果、同じ職場で働くという仲間意識はもてない。

 

そもそもこの相談者は派遣なのだろうか。

2008年のリーマンショック時に多発し社会問題となったの派遣切りへの対策として2012年の改正派遣法により日雇い派遣は原則禁じられたはずである。

雇用保険の適用対象とならない契約期間30日以下の派遣契約は、不安定な細切れ雇用の原因になるとして禁止された。

 

しかし、日雇い派遣は日々紹介として生き残った。

派遣は職業紹介に衣替えされた。

上記相談者は、60才以上や学生など日雇い派遣が例外的に許される労働者には該当しないことから、派遣ではなく日々紹介だと思われる。

 

コンビニの日々紹介の仕組みは概ね以下のとおりである。

①求職者はスマホでコンビニ求人サイトにコンビニ経験等の入力項目を記載して登録する。

②登録会社の運営するサイト掲示版をみて求職者は応募したい日時、コンビニを捜してサイト上の操作で応募する。

③コンビニのオーナー(または店長)から電話でコンビニ経験等の確認の電話を受ける。

④その後、当該コンビニからスマホに採否の決定通知がある。。

 

かつてケイタイが日雇い派遣の必需品であったように、現在ではスマホが日々紹介の必需品である。

通信技術の発達は、労働者保護法を骨抜きにする新しい多様な働かせ方を次々に生み出している。

コンビニの日々紹介もその一つだ。(直井)

 

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