コロナ禍による業績不振を理由として、①賃金の大幅な減額を伴う本社管理部門から店舗のスタッフへの異動を提示され、それが嫌なら、②自己都合退職してもらう、どちらかを選択して欲しいと社長からいわれた。
どう対応すれば良いのか、との相談があった。
会社から、①労働条件の不利益変更を受け入れるか、さもなくば、②自主退職か、との二者択一を迫られたとの相談は少なくない。
二択を迫られた従業員は、自らが採りうる選択肢が会社の示した二択以外にはないと思い込み追い込まれる。
突然の宣告に頭が真っ白となり、労働条件の大幅な切り下げは受け入れ難いため、その場で会社が準備した退職届けに署名してしまう例も少なくない。
会社の思う壺である。
そもそも、会社が一方的に提示した二つの選択肢のどちらかを選択しなければならない法的な義務は従業員にはない。
法的には、どちらも断っても、従前の内容の労働契約が継続するだけだ。
契約内容(労働条件)の変更は当事者の合意で成立するものだからだ。
従業員側から給与の減額幅の縮小や退職条件(退職金の増額)の提案など第三の選択肢を逆提案することも許される。
もっとも、合意解約ではなく、解雇ならは使用者が一応は一方的に行える。
しかし、解雇が法的に有効であるためには、「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」など厳格な要件が法(労働契約法16条)に定められている。
また、会社が解雇(会社都合退職)を避け自主退職(自己都合退職)にこだわる理由には、法的に争われるリスクの回避とは別に、雇用調整助成金など各種助成金の申請上の不利益を避けるためという事情もある。
どちらも受け入れがたい二択を会社から迫られたら、その場での回答は留保して、弁護士、労働組合(ユニオン)など労働問題の専門家に相談することをお勧めします。(直井)
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