解雇などの労使トラブルの解決の際に作成される合意書には、「甲(会社)と乙(労働者)は、本合意書に定めるほか相互に債権債務が存在しないことを確認する。」などの「清算条項」が記載されるのが通例である。
紛争の蒸し返しを防ぐための規定である。
解雇トラブルについて合意書を交換のうえ退職した労働者から以下の内容の相談があった。
退職さえすればすぐに治ると安易に考えていた体調不良(うつ病)が予期に反して長期化しそうになったことから、合意退職後、傷病手当金の申請をすることとした。
申請書の使用者証明欄への記載をを使用者に求めたところ、退職時に交わした合意書に記載のある清算条項を理由に断られたとの相談である。
清算条項は、当事者間に債権債務のないことの確認である。仮に合意書記載の事項以外の何らかの請求権があったとしても、それを放棄するとの私法上の約束である。
一方、傷病手当金の申請は健康保険法に基づき労働者が保険者(協会けんぽなど)に対して行う公法上の請求である。
損害賠償請求とは異なり、使用者に対する私法上の請求ではない。
使用者証明欄への記載は、使用者が健康保険法に基づき負う公法上の義務である。
相談者には、保険者(協会けんぽ)に事情を説明して使用者への指導を求めることをアドバイスした。
(直井)

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