この3月末日で雇い止めをするとの口頭での通告を突然受けたとの相談があった。
相談者は、紹介予定派遣を経て1年半ほど前に直雇いとなった、販売事務職の契約社員である。
労働基準監督署の相談担当者のアドバイスにより雇い止め理由書の交付を会社に求めた。
その結果、ITシステム化により業務量が縮小傾向にあること、担当業務の一部外部委託を進めていることを理由とすると記載した「雇い止め理由証明書」が会社から交付された。
担当職場には1名の正社員と相談者を含め3名の契約社員がいる。
今回雇い止めにあうのは自分のみか、他の人はどうなるのかと相談者が上司に尋ねたところ、他の従業員の取り扱いを説明する義務はない、弁護士にもそう言われたとの回答があった。
会社回答は何か変だ。
本件は事業縮小を理由とする整理解雇事案だ。
たとえ業務上の必要性があっても、使用者は自由に有期契約社員を雇い止めできるわけではない。
日立メディコ事件最高際判決(1986年12月4日)がある。
最高裁は、契約更新について一定の期待権を有するにいたった有期契約労働者の雇い止めにも解雇権濫用法理を適用すべきであると判示した。
この判例法理は2012年の労働契約法改正により法律上明文化(労働契約法19条2項)された。
したがって、契約社員にも解雇権濫用法理の整理解雇への適用法理としての整理解雇の4要件(①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④解雇手続きの妥当性)も適用されることになる。
かりに人員整理について経営上の何らかの必要性が認められるとしても、恣意的な雇い止めが許されるわけではない。
本件事例において、契約社員全員の雇い止めなのか、一部のみの雇い止めなのかは、相談者に対する雇い止めの適法性を判断するに際して重要な判断要素となる。
その点について説明の必要性はないとの会社回答は到底納得できるものではない。(直井)
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