☆辞めてやると啖呵をきる前に☆

次のような相談があった。

相談者は、アルバイトを含めて従業員2、3名の零細企業におけるたった一人の正社員であるである。

零細企業ではよくみられることだが、採用に際して契約書(または雇用条件通知)の交付もない。

 

社長から経営が苦しいので来月から賃金を切り下げるといわれた。

それに対し、相談者が、減額された賃金では生活ができない、賃金を切り下げるなら辞めるほかないと言ったら、社長から、では辞めて下さいといわれ、そのままずるずると退職扱いになってしまった。

 

社長からは時を置かず会社のカギの返還や健康保険証などの返還を求められた。

しかし、退職願いの提出を求められたわけでもない。

不当解雇だと、解雇理由証明書を求めたら、解雇ではない合意解約だと言われた。

 

よくあるパターンである。

合意退職か解雇かが争われる場合、最終的には裁判で決着をつける以外方法はない。

 

不当解雇だとして労働者が裁判で争う場合、解雇されたことは、労働者側が証拠を示して立証する必要がある。

本件のように手続きがすべて口頭でなされため、解雇通知書など客観的な証拠がない場合、社長との発言のやり取りなど面倒な立証の必要が生じる。

 

会社から賃金の切り下げを迫られた場合、そんなら辞めてやると啖呵を切るまえに一呼吸おいて冷静に考えてみることが大切だ。

一方的な賃金の切り下げには同意しないこと、退職する意思のないこと、をはっきりと社長にいうことが大切である。

後で不当解雇として争うことを考えているならば、書面はなくとも、賃金切り下げに応じないならば解雇するとの社長の発言は明確にしておくことが必要である。(直井)