☆年休自由利用の原則☆

入院中の高齢の親の見舞いを理由として年次有給休暇を申請したところ、親の診断書の提出を要求されたが診断書を提出する義務はあるのかとの相談があった。

会社の年休申請書には理由欄があり、それに親の見舞いのためと記載したとのことである。

 

労基法39条の定める年次有休休暇の使途は原則制限はなく、どのように利用するかは労働者の自由です。

年休自由利用の原則といいます。

昭和48年最高裁判決(白石営林署事件)は、このことを「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」と明言しています。

 

この原則の帰結として、労働者は年休を取る際にその理由を説明することを要しないし、かりに説明した目的と別の目的に年休を利用したとしても、年休の成立にはなんら影響がない。

 

使用者が年休の申請に異議を述べることが許されるのは、事業の正常な運営を妨げるおそれが予見される場合のみです(労基法39条5項ただし書き)。

その場合でも使用者には年休の取得時期を変更する時季変更権の行使が許されるだけです。

 

事業の正常な運営を妨げるおそれがあるか否かの判断に年休の利用目的は関係がありません。

年休取得理由によって付与を制限することはできません。

したがって、使用者が労働者に利用目的を尋ねることは合理性がなく原則許されません。

 

もっとも、労働者が休暇を必要とする事情のいかんによっては、業務に支障が生じても使用者が時季変更権の行使を差し控えるのが妥当なこともあることから、使用者が年休取得に向けた配慮のために年休の使途を尋ねること自体は差し支えないと解されています。

 

相談者の会社は、年休取得に向けた、労働者への配慮として診断書の提出を求めているとは思われないことから、会社の対応は労基法39条の趣旨に反したものと言わざるを得ません。

相談者には診断書を会社に提出する法的な義務はありませんと回答した。(直井)