☆「非正規と言うな!」厚生労働省通知の怪☆

厚生労働省が省内の部局に、「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の通知をしたことについて、新聞社が確認のため情報公開請求をしたところ、慌てて通知自体を撤回したとの新聞報道(2019年9月1日「東京新聞」)を目にした。

 

「非正規というな!」通知は、安倍首相が最近やたらに使っている「非正規という言葉をこの国から一掃する」という発言に対する担当部署としてのひとつの「回答」とみていい。

嗤ってしまうといいたところだが、薄ら寒さも感じる。

「非正規」という言葉の力を弱めることで、「非正規」の現実を覆い隠そうというとなのだろう。

 

一般に、有期雇用、派遣、パートなどを総称して「非正規労働者」と呼んでいる。

正規労働者(正社員)の対立概念として使われる言葉だ。

正社員でない働き方、非正社員ともいわれることもある。

 

「非正規」と一括りにした使われ方をするするのは、共通する特徴があるからだ。

不安定な雇用とセットになっている劣悪な労働条件である。

さらに問題なのは、仕事を通じての新たな技能習得の機会が乏しいことから、非正規から抜け出すことができずに、低所得階層として固定化しつつあることだ。

 

正社員として働きたいのに正社員として就職することが難しく派遣労働者や有期雇用労働者として働くものは確実に増え続けている。

正規・非正規労働者の格差問題は、労働力の売買をも市場の自由競争に委ねることを求める、新自由主義政策の下に実施された労働法制の規制緩和の負の結果だ。

 

政策の抜本的な転換なしに非正規問題の解決はない。

政府が旗を振る「働き方改革」は働く者、働かせる者のどちらを向いているのか疑問である。(直井)