☆労働審判を選択するとき☆

不当解雇の相談を受けた場合、ほっとユニオンは、まず、団体交渉を申し入れて自主交渉による解決を目指します。

中小企業の使用者が単に労務管理に不慣れななため、解雇権濫用法理も、労基法の定める解雇手続きも知らず、いわば、無知から乱暴な解雇に及んだ場合は非常に有効です。

中小企業のワンマン社長は交渉の相手としてはかえって扱いやすいのです。

納得さえすれば、自分自身で決定できるからです。

 

これに対し、大企業において、それなりの法的配慮、社内的手続きを経た上での解雇の場合、ユニオンの団体交渉は双方の主張が平行線のままで行き詰まることが少なくありません。

団体交渉にでてくる人事部門の担当者が単独で決定権を持っている場合が少ないからです。

 

大企業では、様々な部門が分割された権限を有し、解雇を撤回するとか、金銭解決をするとかの権限を人事部門だけの判断で行使することは通常期待できません。

決定を変更するには、決定にかかわった様々な部門との意見調整を再度する必要があります。

 

すなわち、大企業では、会社の決定が間違っていたと自ら認め自らの責任で決定を変更できる単独の部門が存在しないのです。

誰も責任を取りたがらないんです。

 

しかし、裁判所の判断を介せば話しは別です。

判決や決定がでたことを理由としたり、裁判所が和解での解決を勧めていることを材料として、人事部門は他部門を説得できるからです。

 

現在、そのような事情から労働審判の手続きの準備を進めている案件が一件あります。

結局は和解で解決することを考えると、余分な手間とも思えますが、これも相手方の納得と得るための必要な手続きなのです。(直井)