☆労働条件通知書☆

 今年の3月に職業安定法が改正され、求人者・募集事業者について、採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合に、その内容を求職者に明示することを義務づける規定が新設された(職安法5条の3第3項、2018年1月1日施行)。求人のとき提示された労働条件と締結された労働契約書の定める労働条件が異なることから生じるトラブルに対応するための規定です。

 

 求人のとき求人票などに記載のある労働条件と締結した労働契約書に記載のある労働条件が異なる場合、どちらが有効かは従前から契約の解釈の問題とされてきた。基本的には、労使の合意がどのようなものであったかという事実認定の問題であるが、実際には締結された契約書の記載内容が有効とされる場合が多い。

 

 しかし、実際上より重要な問題は、労働契約の内容が書面で明確にされないまま働かされていることが多い実情である。とりわけ小規模な事業所においては大まかな口約束だけということも少なくない。労働基準法(労基法15条、同法施行規則5条)は賃金、勤務時間など基本的な労働条件は書面で明示するというルールを定めているのだが、残念ながら必ずしも守られていない。

 

 労使間で残業代未払いなどのトラブルが生じた場合、そもそもどのような労働条件で働いているのかまず争いとなる。契約書(ないし労働条件通知書)が交付されていない場合は、求人広告、求人票、給与明細書などが契約書に代わる有力な手がかりとなる。最近の相談事例で相談者が入社時のネットによる求人広告のコピーを保持していたことが使用者との交渉において役にたったことがある。

 

 労働者がトラブルに備え自らの身を守るためには、日頃から労働条件を記載した書類を保管しておくことが重要である。(直井)