パワハラの典型的な行為としては、厚生労働省の有識者会議がまとめたものとして以下の6類型が示されている。
①暴行・傷害など「身体的な攻撃」、②脅迫・侮辱・ひどい暴言など「精神的な攻撃」、③隔離・仲間外し・無視など「人間関係からの切り離し」、④業務上明らかに不要なことや不可能なことの強制など「過大な要求」、⑤能力や経験とかけ離れた仕事を命じることなど「過小な要求」、⑥私的なことに過度に立ち入ることなど「個の侵害」。
セクハラとパワハラは、職場での優越的地位を利用したハラスメント(嫌がらせ)という共通点はあり、セクハラ・パワハラと一括りにされることもある。
しかし、労働トラブル解決を目指す労働者から相談を受けるユニオンの立場からするとその対応は大きく異なる。
職場におけるいじめ・嫌がらせなどのパワハラはセクハラと比べ有効な解決策の提示が困難である。
端的に言えば、使用者を交渉のテーブルに載せにくい。
パワハラの定義があいまいで業務上の指導との線引きが難しいことが理由の一つである。
診断書・録音など明確な証拠のある「身体的・精神的な攻撃」は別として、一般的ないじめ・嫌がらせの場合は、相談者は上司によるパワハラだと主張し、他方、使用者は業務上の指導だと主張し、平行線になってしまうことが多い。
これに対し、セクハラについては、「相手方の意に反する性的言動」と定義され、均等法に「職場において行われる性的な言動」について使用者に必要な措置をとるように義務づける規定(11条)がある。
また、厚生労働省告示でセクハラにあたる「性的な言動」について具体例を示しているので、問題となっている当該行為がセクハラに当たるとの主張は比較容易である。
パワハラはセクハラと違って直接これを定義し規制する法律がないことが交渉を難しくしている。
ただし、パワハラが解雇にまで至れば(または至りそうならば)話しは別である。
この場合は、解雇(または辞めざるを得なくなった状況)に至たるまでの違法性・不当性の背景事情としてパワハラを主張することになる。(直井)
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