居宅支援事業所で働くケアマネージャーから相談があった。
コロナ対策として人員を2班に分けて2交替の勤務体制をとることになった。
公休ではない非出勤日の賃金の取扱いについての不満である。
事業者は非出勤日には休業手当として通常賃金の6割相当額を支払うという。
しかし、ケアマネとしては、担当する利用者の人数は変わらないことから総体としての業務量は減少するわけではないのに、総体としての賃金が減額になることに納得できない。
同じ業務量を半分になった出勤日数でこなすため、出勤日の労働密度が倍増している。
さらに、非出勤日であっても、担当する利用者にかかる連絡がある。
法的にいえば、非出勤日に在宅勤務として勤務の実態があれば、10割の賃金を支うべきである。
非出勤日は全くの自由利用であり使用者の指揮命令の実態がなければ、休業手当として平均賃金の6割以上を支払えば、労働基準法26条はクリアーすることになる。
件相談者は出勤日にサービス残業が発生していることも不満であった。コロナ騒ぎのどさくさに紛れてのサービス残業は要注意だ。(直井)
NPO法人の運営する売店の販売員として働いていたところ、顧客対応上のトラブルから3か月間給与1割減の減給処分とともに謹慎として自宅待機を命じられたとの相談があった。
相談者は自分にも非のあることから減給処分は受け入れるつもりである。
問題は自宅待機である。
折からのコロナ騒ぎのためもあり売店は当分の間閉められることになった。
自宅待機は売店再開までの期間とし、減給は売店再開以降の3か月間と言い渡された。
使用者は「自宅待機」期間中の賃金を支払うつもりはないようである。
使用者のいう謹慎としての「自宅待機」の意味は分かりにくい。
賃金が支払われないことからすると懲戒処分のひとつとしての出勤停止処分とも解される。
この場合、減給処分との併科ということになる。
懲戒処分の併科が適法とされるためには、①就業規則に2つ以上の懲戒処分を課すことがあるとの規定があること(「就業規則上の根拠」)と②併科しなければならないほど処分対象行為が重大・悪質であること(「処分の相当性」)の2つの要件をクリアーすることが求められる。
本件についていえば、売店再開までという不定期の出勤停止処分が従業員の立場を著しく不安定にするものであることから、「処分の相当性」の要件をクリアーすることは困難である。
他方、自宅待機命令が懲戒処分としての出勤停止ではなく、コロナ騒ぎの影響で販売が減るなどの事情からの休業だと解する余地もある。
労働基準法26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならない、と定めている。
「使用者の責めに帰すべき事由」とは、不可抗力以外の場合と厳格に解されている。
すなわち、不可抗力とは解されない休業の場合は、使用者は休業手当の支払い義務を負うことになる。
また、緊急事態宣言の発令による休業であってもそれだけで不可抗力とは解されるわけではない。
したがって、販売不振がコロナ騒ぎの影響であっても使用者は休業手当の支払いを免れることはできない。(直井)
ほっとユニオンは、相談者が、組合に加入することにより自らが抱える労働トラブルの解決を図ることを決めたら、速やかに会社に対して「組合加入通知(兼)団体交渉申入書」を郵送する。
相談者が組合に加入したことを通知するとともに、会社に対して団体交渉のための日程調整を求めるためである。
このコロナ騒ぎに中で、会社から「現在の社会情勢に一定の落ち着きがみられるまで、出来ましたら先送りさせていただきたくお願い申し上げます。」とやんわり団体交渉の先送りを求める回答があった。
若干のやりとりの後に、感染防止対策として、参加人数を絞ったうえで、マスクを付けた状態での団体交渉が持たれることとなった。
労働組合法7条は、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」(同条2号)を不当労働行為として禁じている。
法的に言えば、特措法に基づく緊急事態宣言が発せられた現在、緊急事態宣言が「団体交渉を拒否する正当な理由」に当たる否かが問題となる。
しかし、個々の労働者が抱える問題は多様であり、その解決のためには時機を失することのなく臨機応変な対応が求められる。
交渉方法については、労使双方が知恵を出し合って柔軟に対応することが必要だと考える。
例えば、第1回目の交渉で解決への道筋の大枠の合意を目指し、その後の交渉は、メール、電話のやりとりをで行うということが考えられる。
それにしても、コロナ騒動の一刻も早い終息を望む。(直井)
病気の治療のため医者からしばらく会社を休むように指示され、有給休暇を利用して自宅療養をしていた。
有給休暇(約20日)をすべて使い切っても病気が治癒しないことから、有休休暇の最後の日をもって退職することになった。
退職後も病気が治癒しないまま働けない状態が続いている。
在職中は最後の日まで給与の支給があったため傷病手当金を受給していなかったが、退職後の期間について傷病手当金の申請はできるのかとの相談であった。
傷病手当金の支給を受ける条件は以下のとおりである。
①業務外の病気やケガのため療養中であること
②仕事につけないこと(労務不能)
③3日間連続して仕事を休み、4日目以降にも休んだ日があること
3日間連続して休むことのより待機完成となり、4日目以降の休んだ日から支給される。
④給与の支払いがないこと
受給は在職中だけでなく、退職後の期間についても、退職前に1年以上の在職期間があれば受けられる。
ただし、退職時に、傷病手当金を受けていたか、または受けられる状態であったことが必要です。
相談者は、退職の日まで有給休暇をとって休んでいたことから、無給欠勤の日がない。
そのことから、「④給与の支払いがないこと」の条件を満たしていないと思い込んでいた。
そのような心配は無用である。
退職時に、傷病手当金を受けていなくても、傷病手当金を受けられる状態であれば、問題ない。
例えば、病気で働けないことから仕事を休んでいたが給与が支払われていたため傷病手当金は支給されていなかった場合、なども受給できる。
「④給与の支払いがないこと」は、傷病手当金の調整のための条件といえる。
なお、退職日にたとえ半日でも勤務した場合は対象とならなくなるので注意のこと。(直井)