労働トラブルにおいて会社に対し未払賃金など請求するとき、(配達証明付きの)内容証明郵便での通知を勧められることが多い。
しかし、内容証明は差し出しの手続が一般にあまりなじみがない。
なぜ内容証明でなければいけないのか。
<内容証明とは>
内容証明とは、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを差出人が作成した謄本(写し)によって郵便局が証明する制度です。
これに配達証明を付けることによって、受取人が受け取った日付の証明も付加されます。
<証拠を残すため>
内容証明の本来の目的は、契約を解除するなどの意思表示の内容を証拠として残すことにあります。
事前の催告を要件とする契約解除など手続が厳格に定められている場合、後日その法的効果が裁判で争われたときに備え証拠を残すためです。
すなわち、内容証明は受取人への通知を適法に実施したという証拠を残すためのものです。
しかし、意思表示は内容証明でなく一般の手紙でも有効です。
口頭でもメールでも有効です。
内容証明自体は意思表示の適法要件ではありません。
<心理的圧力を加えるため>
労働トラブルにおいて内容証明郵便が果たす役割は、相手方に精神的な圧力・プレシャーを与えるという心理的効果です。
内容証明は、宣戦布告の通知や相手方の出方をうかがうために使われます。
「期限までに請求に応じない場合に法的な措置をとる」などの記載が付加されることもあります。
内容証明の本来の効果は、意思表示の内容・時期を公的に証拠として残すということですが、内容証明を受け取った相手方は、普通の手紙をもらう以上に「何とかしなければ」と思うものです。
<書式の決まり>
内容証明は、受取人に送付する文書の他に謄本2通(差出人及び郵便局が各1通ずつ保存するもの)を作成すること、謄本の書き方は、横書きの場合、1行20字以内・1枚26行以内など字数・行数の制限があることなど、一定の決まりにそって作成する必要があります。
一般的にはあまり馴染みのない手続きです。
残業代の積算資料など関係資料を同封することもできません。
そのため、使い勝手が悪いともいえます。
また、通常郵便料に加え、一般書留料(430円)、内容証明料(1枚430円)、配達証明料(310円)が係ります。
<ほっとユニオンのおすすめは特定記録>
ほっとユニオンは、会社への通知に特定記録郵便を利用しています。
通常の手紙と同様に書式等の決まりはありません。
また、料金は通常郵便料金に特定記録料金(160円)をプラスするだけですみます。
でも、通常の郵便とは異なり、配達された日時が記録されることから、後日の証拠にもなるし、受取人に対する心理的効果も期待できます。
手続きの難易、料金の違いを考えると、使用者への通知はおきまりの「配達証明付き内容証明」ではなく、「特定記録」を勧めたい。(直井)
ほっとユニオンは団体交渉申入書を配達証明ではなく特定記録で出しています。
普通郵便ではなく、特別な郵便サービスを利用する理由は、配達された証拠を残すためです。
配達された証拠を残す代表的な方法は配達証明です。
「配達証明」は文字通り配達されたことを郵便局が証明してくれるもので、配達終了後郵便局から配達日時が書かれたハガキが届きます。
しかし、早く確実に会社に郵便物を届けたい場合、配達証明はかえって不都合なときがあります。
配達証明は手渡しのため受取人が不在のときや受領拒否をしたとき郵便物が配達されないまま差出人に戻ってしまうことがあります。
このような配達証明の不便を回避し、また、いつ配達されたかの記録が確実に残る方法として、ほっとユニオンは特定記録郵便を利用していています。
特定記録は、配達証明とは違い配達済みのハガキが届くサービスはありませんが、受取人にいつ届いたかをデーターで記録するサービスがあります。
差出人は配達済みを含め配達状況の記録をWEB上で追跡確認することができます。
また、特定記録は、受取人に手渡しをするのではなく、受取人の郵便受に配達するので、受取人が不在でも、差出人に戻されることなく確実に受取人に配達されます。
また、配達証明は、一般書留とした郵便物に付加されるサービスなので、通常郵便の料金に加え、一般書留料金(430円)と配達証明料金(310円)がかかります。
これに対して、特定記録は通常郵便料金に特定記録料金(160円)をプラスするだけですみます。
特定記録はお得で便利なサービスといえます。(直井)
通勤手当の遡及払いの請求を拒否されたとの相談があった。
いつものように都内のカフェで話しを聴くことになった。
以下のような話しであった。
1年ほど前にバス運賃が値上げしたことを届け出ないままにしていた。
以前の運賃値上げのときは、とくに届け出手続なしで通勤手当てが改訂されたこともありそのままにしていたとのことである。
いつまで待っても通勤手当ての改訂がないので、この度、給与担当者にその旨を話して届け出ることにした。
会社の定める通勤手当規程には、①通勤手当として実費を支給すること、とともに、②入社の際に通勤経路を届け出ること、③通勤経路の変更等があった場合はすみやかかに届け出ること、など手続についても規定されている。
給与担当者は、通勤手当の改訂は従業員からの届け出を前提にしていることを根拠に遡っての支給はできないと説明しているようである。
通勤手当は賃金であり、その消滅時効は2年である。
逆にいえば2年以内ならば遡って請求できる。
また、支払いの根拠は労働契約であり、本件の場合は通勤手当規程がその根拠となる。
実費を支払うとの通勤手当規程の定めからすれば、遡及払いは認められないとの給与担当者の説明は合理性がない。
以上の見解を相談者に説明したところ、給与担当者にもう一度話してみる。
一応すじを通してみるが、遡及する請求額は5千円程度なので、それでダメなら、あえてそれ以上争うつもりないとのことであった。
ちなみに、カフェでの労働相談を申し込んだ理由は、千円の相談料と自分の飲み物代の負担だけなら、労働トラブルの専門家に話しを聴いてもらい、不満を吐き出し、スッキリしたかったからのとのことである。
ほっとユニオンはそのような相談も歓迎します。(直井)
上司によるパワハラが耐えられず退職した労働者からの相談があった。
退職を撤回したいとか、パワハラの慰謝料を請求したいという相談ではない。
退職日の1か月後に支払われるはずである夏の賞与を請求できないかという相談です。
夏の賞与の評価対象期間は在籍している。
しかし、支給日を待てずに退職してしまった。
退職を急いだ理由が上司のパワハラに起因したことから、賞与不支給が納得ができないとのことです。
支給日在籍要件が就業規則などに定められていれば、賞与の評価対象期間には在籍しているが賞与の支払い日に在籍しない従業員を支給対象から除外とすることは一般的には違法とはいえない。
問題はパワハラで辞めざるを得なかった事情をどう評価するかです。
支給日まで在籍できなかった事情が会社側の責任ともいえる本件では、支給日在籍要件を満たさないことによる不支給は、信義則違反、権利の濫用として争う余地はある。
しかし、パワハラの事実およびそれと退職との因果関係の立証など超えなければならないいくつかのハードルがある。
ほっとユニオンとしては、可能ならば、その場の勢いで「辞めてやる!」と啖呵を切る前に相談に来て欲しかった。(直井)