☆傷病手当金申請書の「事業主の証明」欄への記載拒否☆

協会けんぽの傷病手当金の申請書は1セット4枚で、1枚目と2枚目4は「申請者情報」と「申請内容」で、申請者である従業員が記載する。

3枚目は「事業主の証明」、4枚目は「療養担当者の意見書」でそれぞれ事業主、診察をした医師が記載する。

 

傷病手当金の申請は従業員本人がすることになっているが、在職中は、職場の庶務担当者が代行してくれることが多い。

庶務担当者の指示にしたがって「申請者情報」「申請内容」の記載及び押印をし、受診している医者に「療養担当者の意見」を記載してもらう。

それらを庶務担当者に提出すれば、あとは庶務担当者が処理してくれる。

保険者への提出は会社が代行する。

いわゆる「会社経由」の提出です。

 

しかし、使用者が会社経由の掲出を拒否した場合、従業員は自分自身で申請書類をそろえて保険者に提出しなければならない。

その場合、問題になるのは、使用者のみが記載できる「事業主の証明」欄です。

 

「事業主の証明」欄は、傷病手当金申請期間にかかる出退勤の状況やその間の賃金の支払い状況を使用者が記載・証明する欄です。

評価の伴わない客観的な事実の記載なので、記載することによって使用者の不利益になることは考えられないが、まれにこの欄への記載を拒否する使用者がある。

多くは嫌がらせによるものです。

 

健康保険法施行規則33条は、「事業主は、保険給付を受けようとする者からこの省令の規定による証明書を求められたとき、又は第110条の規定による証明の記載を求められたときは、正当な理由がなければ拒むことができない。」と規定し、申請書の「事業主の証明」欄への記載拒否を禁じているが、残念ながら規則33条違反を直接の理由としての罰則は存在しない。

 

しかし、罰則がなければ従わなくても済むというは問題だ。

保険者である協会けんぽは、被保険者(従業員)の権利を守るために、法の規定を無視する悪質な事業主に対しては強力な指導を行い、場合によっては健康保険法197条の報告等義務違反として健康保健法216条の規定を適用しての過料(10万円以下)の制裁を課すべきである。

ほっとユニオンは、傷病手当金申請の相談にも応じております。(直井)

 

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☆注意書(指導書)に注意☆

不当な解雇を言い渡されたと駆け込んでくる相談者は相変わらず多い。

 

解雇が不当・違法なものであることを会社に対して争うためには、まず、具体的な解雇事由を記載した解雇理由証明書(労働基準法22条2項)の交付を求めることから始める。

会社の考える解雇理由を明確にして置かないと、何が不当・違法であるのかについて裁判所など第三者に説明することが難しいからである。

 

周到に解雇の準備をする会社は、解雇を言い渡す前に、解雇理由にあたる個々の具体的事実を書面にして残すという方法をとる場合がある。

注意書や指導書という名称のもので、出来事の発生の都度、注意や指導を文書で労働者に交付することがある。

 

その際、当該文書に労働者の署名を求めることがある。

単に受領したことの確認のための署名ならば署名を拒否するのは難しい。

記載の事実がないときは、記載の事実はありませんと追記のうえ署名することを勧める。

 

注意書などで指摘した事実を認め、今後、同様な行為を行わないとの誓約する旨の記載に対する署名は要注意である。

記載のある事実に過ちがある場合はそのまま署名することは絶対に避けなければならない。

後日、解雇事由を自認したことに使われるおそれがあるからである。

 

このような場合、記載事実の誤りを指摘したうえで、今後ともそのようなことは行わないと記載を訂正のうえで、署名することを勧める。(直井)

  

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☆シフト制における休業手当て☆

正社員としてシフト制で働いている相談者が体調不良で2週間ほど休んだ後、明日から出社すると会社に連絡したところ、解雇予告の言い渡しとともに言い渡し日から解雇日まで出社におよばずと命じられた。

事実上の即日解雇であるが、解雇言い渡し日から解雇日まで30日以上あることから解雇予告手当の支払い義務は発生しない。

 

相談者の不満は解雇そのものの不当性にあるのだが、それは別として、解雇言い渡し日から解雇日までの賃金は支払われるのであろうか?

会社は解雇言い渡し日から先にシフトの指定がないことを理由に賃金の支払を免れるつもりのようだ。

 

しかし、出社に及ばないとしてシフトを組まないのは会社の責任であり、シフトがないことを理由として賃金の支払いを免れることは許されない。

会社側の都合で労務の受領が拒まれているのだから、労働者は反対給付としての賃金を受ける権利は失われない(民法536条2項)。

 

正社員である限りシフト制であっても、月何日出勤するなど所定労働日数、所定労働時間の定めがあるはずである。

シフトが組まれていない場合でも、所定労働日数、所定労働時間に基づいて賃金請求権が発生することになる。

 

なお、本件では休業手当ての支払い義務も発生する。

休業手当ての支払いは、平均賃金の6割を罰則の強制をもって使用者に支払わせる労基法上の義務である。

しかし、たとえ、6割の休業手当てが支払われたとしても、労働者は民事上の請求権として通常勤務していれば支払われるべき賃金額に不足する額について請求権を失うものでにない。

 

 

すなわち、かりに休業手当てが支払われたとしても、通常の賃金額に不足する額についての請求をあきらめることはない。(直井)

 

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