労働トラブル解決のための選択肢は、労基署など行政機関への相談から始まり、労働局のあっせん手続、裁判所へ訴えの提起など多様なものがあります。
その中でユニオンによる団体交渉は費用対効果の観点から魅力的な選択肢といえます。
裁判手続は法的強制力があり強力ですが解決までに時間がかかるし、必ずしも少額とはいえない弁護士費用を負担する覚悟が必要です。
簡易な手続きとして公的機関によるあっせん手続がありますが、任意な手続であるため、使用者にあっせん手続への参加を拒否されてしまうと打つ手がありません。
これに対し、ユニオンによる団体交渉は、法の定める厳格な手続のもとに進められる裁判とは異なり、事案に応じて迅速・柔軟に対応できます。弁護士に依頼する費用も節約できます。
また、任意の手続であるあっせんとは異なり、使用者が団体交渉に応ずることを拒否することは不当労働行為して労働組合法が禁じているので、使用者が交渉の入り口で交渉自体を拒否することは違法となります。
このように説明すると、ユニオン活用は良いことづくめのようですが、ユニオン活用にも問題があります。
ユニオンの団体交渉を利用するためには前提としてユニオンの組合員となる必要があります。当然ですが組合費がかかります。
それ以上に問題なのは、ユニオンは千差万別であり、その社会的信用性を保証する仕組みがないことです。
弁護士にも当たり外れはありますが、ユニオンの当たりはずれの比ではありません。
また、使用者による団体交渉の拒否は違法ですが、トラブル解決に至るにはあくまで当事者双方の譲歩による合意が必要です。
交渉が行き詰まった場合を考えて、事前に次の手を準備しておく必要があります。
相談カフェと連携しているほっとユニオンは労働審判のお手伝いもします。
本格訴訟となった場合は、相談カフェの構成員である弁護士に速やかに案件を引き継ぎます。
その場合でも社労士であるほっとユニオン執行委員が補佐人として訴訟手続に引き続き参加します。
相談カフェはユニオン・弁護士・社労士が連携して労働者に安心をお届けするシステムです。
(直井春夫)
労働相談カフェは、弁護士(裁判手続き)・社会保険労務士(あっせん手続き)・ユニオン(団体交渉手続き)など労働問題解決の専門家による労働者支援のネットワークです。
固定した相談ルームを構えて相談を受けるのではなく、相談者の指定する都内のカフェで相談に応じるという方式をとっています。
「労働相談カフェ@表参道」という名前は、表参道のおしゃれなカフェのように落ち着いた雰囲気のなかで手軽に相談に応ずるという相談カフェの理念を表現したものです。
街のカフェの活用は、相談カフェにとっては相談スペースの確保のための固定費を節約できるというメリットがあり、他方、相談者にとっても馴染みの場所で安心して相談を受けられるというメリットがあります。
とはいっても、相談カフェは何でも無料のボランティア団体ではありません。責任をもって相談に応じるには費用が発生します。
電話相談(ないしメール相談)は無料ですが、カフェでの対面相談では、カフェ代・交通費などの実費として一律1,000円の相談料をいただいております。
ただし、相談の結果、トラブルの解決方法として、弁護士・社労士への依頼、ユニオンへの加入など次の具体的なステップに進む場合は、相談料は頂きません。
カフェでの相談は、トラブル解決に向けた具体的な第一歩を踏み出すための手段・方法を一緒に考えるための相談とお考えください。
使用者に異議を申し立てることで獲得可能な利益とそのためにかかる費用・時間を説明した上で、最適な争い方を提案します。
労働相談カフェは単なる情報提供を目的とするのではなく、解決に向けた具体的なお手伝いをする専門家と問題解決を求める労働者とをつなぐことを目的としています。
共同代表の一人である直井春夫と申します。
労働相談カフェは労働問題の専門家が集まって作っているネットワークなので、厳密な意味での代表者は存在しません。
とはいっても「安心・信頼」を売りにする以上、代表者の弁が必要と考えて、共同代表の一人として私がご挨拶をすることにしました。
2015年3月に40年間勤めた東京都庁を退職しました。
東京都庁での40年間のうち、16年間は労働委員会の事務局職員として労使紛争の処理に従事し、15年間は法務部で知事の代理人として訴訟事務に従事していました。
そして都庁退職後の2015年4月に企業の所属の有無に関係なく誰でも加入できる地域ユニオンとして「ほっとユニオン」を立ち上げました。
都庁で携わった労働関係、訴訟関係の仕事の経験を生かし、いわば退職後のボランティア活動として始めたものです。
今回立ち上げた労働相談カフェは、この2年間のユニオン活動の中で協力しあった弁護士・社会保険労務士など労働問題解決の専門家と連携して、使用者との紛争などで困っている労働者に利用しやすい新たな仕組みを提供することを目的としています。
労働相談カフェの活動もユニオン活動の延長線上にある退職後のボランティア活動の一環です。
しかし、ボランティア活動だからといって、なんでも無料の活動を考えているわけではありません。
社会的な活動をするためには、組織が必要です。どんなにささやかな組織でもそれを運営するためには、ヒト、モノ、カネが必要です。公共性のある事業にかかる費用を賄うための収益(利益ではありません)を確保しながら自立的に運営するソーシャルビジネスを目指しています。
16年間の東京都労働委員会での活動も含め、労働問題に関わった長い年月の間に培った弁護士、社会保険労務士、ユニオン活動家など労働問題の専門家との結びつきをこのネットの活動に生かしていきたいと考えています。