☆会社が退職を迫る二択の罠☆

コロナ禍による業績不振を理由として、①賃金の大幅な減額を伴う本社管理部門から店舗のスタッフへの異動を提示され、それが嫌なら、②自己都合退職してもらう、どちらかを選択して欲しいと社長からいわれた。

どう対応すれば良いのか、との相談があった。

会社から、①労働条件の不利益変更を受け入れるか、さもなくば、②自主退職か、との二者択一を迫られたとの相談は少なくない。

 

二択を迫られた従業員は、自らが採りうる選択肢が会社の示した二択以外にはないと思い込み追い込まれる。

突然の宣告に頭が真っ白となり、労働条件の大幅な切り下げは受け入れ難いため、その場で会社が準備した退職届けに署名してしまう例も少なくない。

会社の思う壺である。

 

そもそも、会社が一方的に提示した二つの選択肢のどちらかを選択しなければならない法的な義務は従業員にはない。

法的には、どちらも断っても、従前の内容の労働契約が継続するだけだ。

契約内容(労働条件)の変更は当事者の合意で成立するものだからだ。

従業員側から給与の減額幅の縮小や退職条件(退職金の増額)の提案など第三の選択肢を逆提案することも許される。

 

もっとも、合意解約ではなく、解雇ならは使用者が一応は一方的に行える。

しかし、解雇が法的に有効であるためには、「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」など厳格な要件が法(労働契約法16条)に定められている。

また、会社が解雇(会社都合退職)を避け自主退職(自己都合退職)にこだわる理由には、法的に争われるリスクの回避とは別に、雇用調整助成金など各種助成金の申請上の不利益を避けるためという事情もある。

 

どちらも受け入れがたい二択を会社から迫られたら、その場での回答は留保して、弁護士、労働組合(ユニオン)など労働問題の専門家に相談することをお勧めします。(直井)

 

 

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☆解雇は転職に不利?☆

辞めてくれないかといわれた、解雇されると履歴が汚れるので解雇は避けたい、解雇を言い渡されるくらいならば退職することを考えている、しかし、離職票には自己都合ではなく会社都合として記載して欲しいという相談があった。

 

解雇されたら履歴が汚れる。

転職への悪影響が心配だ。

転職の面談の際、前職の離職理由を解雇といいたくない。

以上のように考える労働者は少なくない。

 

使用者は、従業員のこのような不安を逆手にとって、退職に応じないならば、解雇すると脅し、執拗に退職願いへの署名・押印を求める。

 

しかし、使用者の狙いは、後で解雇の適法・違法が争われるリスクを避けることにある。

 

他方、何事も金銭換算したコスパ・損得で判断したがるネット情報の影響か、離職票の記載に会社都合を求める労働者は多い。

会社都合の離職が失業手当の給付において有利であるからだ。

 

転職など自己の都合により離職した場合は7日間の待機期間にプラスして給付制限期間(3か月)がある。

解雇など会社の都合により離職した場合は受給資格決定後7日間の待機期間が経過すれば給付を受けられる。

収入の道をたたれた退職者にとって3か月間も給付を待たされることのダメージが大きい。

 

解雇の不名誉は避けたい、他方、失業手当の関係では会社都合(解雇、退職勧奨など)としたいと考えているのが退職を迫られた多くの労働者の本音といえる。

 

そのため、ほっとユニオンは、解雇が争われた案件の和解において解雇撤回・円満退職で解決した場合、「会社都合による退職」という文言を合意書に入れることにしている。

 

しかしながら、そもそも、非行行為などを理由とする懲戒解雇でないかぎり、解雇を言い渡されることは労働者にとって必ずしも恥ずべきことではない。

納得できない解雇ならばなおさらである。

 

弱気にならず、納得できないならば、安易に退職願いへの署名・押印はしないで、まず、専門家に相談することを薦める。

安易に任意の退職に応じないことによって、同じ辞める結果になるとしても、使用者の譲歩を引き出し、より有利な退職条件を得ることが可能になる。

 

強いことを言っても、使用者の本音は訴訟リスクを回避するために解雇を避けることにある。

使用者にとっても正式に解雇を言い渡すことは怖いものなのです。(直井)

 

 

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☆未成年者が提出した退職願の有効性☆

この4月に高校新卒で採用され、試用期間中であり研修期間中であった6月初旬には退職に追い込まれた未成年者A(18才)の父親からの労働相談があった。

未成年者Aは就職と同時に親元から独立して一人暮らしをしている。

会社はシステム構築を主な業務とする大手SI企業である。

 

民法の建前では未成年者は単独では有効に契約などの法律行為を行うことができない。

未成年者が労働契約を締結するには法定代理人(親権者)の同意を要する(民法5条1項)。

そして、同意を得て未成年者が締結した労働契約であっても、親権者らは、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向かってこれを解除することができる(労基法58条2項)。

 

他方、未成年者が労働契約を親の同意なしに単独で有効に解約できるか否かについては労基法にも民法にも明文の規定はない。

しかし、未成年者が親の同意を得て労働契約を締結した場合は、未成年者が営業を許された場合の規定(民法6条)を準用して、労働契約上の諸行為につき未成年者は「成年者と同一の行為能力を有する」と解されている。

 

そうとすると労働契約の解約は未成年者が親の同意なしで有効に行いえると解される。

本件については、未成年者Aが退職願いを提出していることから、退職願い提出の任意性が争点となった。

 

未成年者Aは新しい職場になじめず体調を崩し5月の連休以降休みがちになり、心配した研修担当者のアドバイスもあり心療内科を受診した。

診断の結果、医師は抑うつ状態にあることから療養のため3か月間の休養を勧めた。

 

未成年者Aがその旨を会社に報告したところ、人事担当者は直ちに産業医面談を設定し、産業医面談において、産業医は3か月程度の休養の必要性を認めた。

産業医面談に同席した人事担当者は、試用期間中の長期病気休職は認められないこと、及び解雇されると次の就職に不利になることから、自主退職以外の選択肢がないことを未成年者Aに述べ、早期に自主退職を決断するうように促した。

 

そして、産業医面談から1週間も経たない時期に設定された退職手続きの場において、未成年者Aは、人事担当者に促されるままに、「一身上の都合による退職」であることを記載した「退職願」、「会社に関係のない自己都合退職」であることを記載した「退職理由書」などに署名押印のうえ提出した。

 

以上の退職の経緯からすれば、会社の対応は違法とまではいえないとしても、いまだ試用期間中の高校新卒採用の未成年者にはいささか酷に過ぎる。

会社には新規採用職員を長い目で見守り育てる姿勢が感じられない。

 

むしろ、大量採用した新卒の落ちこぼれを効率よく切り捨てるというブラックさを感じる。

退職願いを提出する前に相談に来てもらえれば別の解決もあったのではないかと悔やまれた。(直井)

 

 

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☆「追い込まれた退職」後の憤懣☆

毎月の残業が60時間から80時間と続き心身ともに疲弊していた。

直属の上司に残業時間の削減など職場環境の改善を求めたが、口先だけで一向に改善されない。

年休もとれない状態で行政など外部の相談機関に行く時間も気力も体力もない。

 

回復不可能なダメージを受けるおそれがあるところまで追い込まれ、ぎりぎりのところで退職を申し出て辞めることにした。

3か月程度は呆然と過ごしたが、体調が回復し気持ちも落ち着いてくると、職場での理不尽な取り扱い、何で辞めなければならなかったのだろう、と納得しきれないもやもやした気分がわいてきた。

 

そしてほっとユニオンに相談にきた。

相談の趣旨は転職など前に進むためには、過去の職場でのことに気持ちの区切りをつけたいということであった。

ほっとユニオンは使用者とのトラブルを抱えた労働者の駆け込み寺です。

 

本件は、辞めざるを得ない状態に追い込まれことに対して、安全配慮義務違反を理由として使用者に対して損害賠償請求が可能な案件である。

しかし、相談者は使用者を相手に訴えるとか交渉するとかまでは考えていない。

自分の窮状を知りながら何もしてくれなかった職場の上司・同僚に対する遣り切れない気持ちを聴いて欲しいということのようであった。

 

 

職場に身近な相談先としての労働組合があったら辞めなくても済んだのではないかと残念に思う。(直井)

 

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