カテゴリ:試用期間



2022/07/26
正社員募集に応募したら、採用面接において、6か月間の有期契約書への署名押印を求められ、そのあげく、6か月間経過後には正社員登用の約束は反故にされた。 しかし、試用期間としての性質を有する有期契約においても、会社は自由に正社員への登用拒否(本採用拒否)を行えるわけではないことは通常の試用期間と同様である(神戸弘陵学園事件・最三小1990年6月5日判決)。 正社員への登用拒否(本採用拒否)には解雇の場合と同様に客観的・合理的な理由が求められる。
2021/11/03
そもそも、試用期間の延長は、就業規則などで延長の可能性およびその事由、期間などが明定されていないかぎり、試用労働者の利益のために原則として認められない。 解約権留保付き労働契約と解される通常の試用関係においては、解約権が行使されないまま試用期間が経過すれば、労働関係は留保解約権なしの通常の労働関係に移行するのが原則であるからである。 さらに試用期間の延長が退職勧奨とセットで提示されたことは、会社が留保された解約権を行使した場合に解雇事案として法的に争われるリスクを回避する目的で、労働者の自主的な退職をうながすための手段として試用期間の延長が持ち出されたことが窺われる。
2019/06/29
小規模な企業では試用期間中は社会保険に加入しないとの取り扱いをする例が少なくない。 なぜ、社会保険の不加入を問題として企業に怒らないのだろうか。 昨今話題となっている、老後の年金生活で2,000万円の蓄えが必要であるとの試算のモデルとなっているのは、40年間厚生年金に加入し安定した雇用機会に恵まれた労働者である。 安定した職場で働けない労働者には老後の年金生活を考えるゆとりさえないのである。 誰もが安心して働ける安定した雇用機会の保証こそが急務である。
2019/03/23
試用期間として有期契約を利用する例は少なくない。 使用者は通常の試用期間とは違って、有期契約としての試用期間ならば期間満了を理由として解雇(雇い止め)が容易であると考えているのであろう。 しかし、試用期間か否かは、契約の形式ではなく実態で判断するのが裁判所の立場であり、有期雇用が試用期間であると判断される場合は、単に期間満了を理由とする解雇は許されない。 本採用を拒否する合理的な理由が必要である。
2018/04/01
雇用期間3か月の労働契約書を交わした労働者が期間の途中に解雇を言い渡され相談に来た。 使用者は、雇用期間3か月はすべて試用期間であり、解雇権濫用法理の適用はないと主張している。 3か月間の雇用期間の全てが試用期間という労働契約はどのような法的な意味をもつのだろうか。 判例(神戸弘陵事件最高裁判決)によれば、雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適正を評価・判断するためのものであるときは、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解される。 この判例法理に従えば、上記契約は3か月間の試用期間付きの正社員契約ということになる。