ほっとユニオンは東京地域の未組織の労働者の駆け込み寺として活動しています。
ほっとユニオンは小なりといえどもれっきとした労働組合である以上、使用者との労働トラブルは団体交渉での解決を基本としています。
労働組合の団体交渉権は労働組合法によって保護されており、会社が労働組合の団体交渉の申入れを拒否することは禁じられています。
しかし、駆け込んできた労働者が抱えるトラブル全てが団体交渉によって解決されるわけはありません。
団体交渉は話し合いの手続きですから、会社側が一切の譲歩を拒否すれば、話し合いは不調に終わらざるを得ません。
交渉相手である会社の従業員を多数組織している労働組合であれば、ストライキなどの争議行為に訴えて行き詰まった交渉の打開を図ることが考えられます。
しかし、当該会社内で組織している組合員が駆け込んで来た当該組合員一人であることが多いユニオンにはストライキなどの争議行為は現実的ではありません。
以上の理由から、ほっとユニオンは、交渉が不調に終わるときに備え、常に裁判手続きを見据えて交渉に臨むことにしています。
最初の相談の時点で、相談者に労働トラブルに係る事実の経過メモの作成をお願いしている由縁でもあります。(直井)
なんらかの事情で年度途中の半端な時期に退職せざるを得なくなることがある。そのような場合、退職日をいつにするか会社との相談で決めることがある。給料計算の便宜から給料の締め切り日とか切りのいい月末とかに決める例が多い。
退職した労働者から次のような相談があった。
退職の手続きの話しの中で、最後の月分の社会保険料(厚生年金、健康保険)の従業員負担分(天引き)の負担を避けるためという理由から、退職日(離職日)を月末の前日とすることを会社の庶務担当者から勧められた。相談者は一旦は了承したが、後になって厚生年金の被保険者期間が1か月分少なくなり、将来受ける年金額がその分少なくなることに気づいた。どうにかならないかという相談であった。
社会保険(健康保険、厚生年金)は労働保険(労災保険、雇用保険)とは異なり、月単位の加入となる。具体的には、当該月を被保険者期間としてカウントするか否かは、当該月の末日に被保険者資格を有しているか否かを基準に判断する。
保険料の負担は会社と従業員の折半で、従業員負担分を含め会社が毎月、保険者に納付することになる。くだんの会社はこの保険料の会社負担分を節約する目的で、退職予定の従業員に従業員負担分(通常は給料から天引きされている)の節約になるからと親切ごかしに月末日に被保険者資格を喪失することになる月末日前日退職を勧めたわけである。
この節約は会社については経済合理性はあるが、従業員にはない。そもそも、国民皆保険の原則に基づき、失業期間中も国民健康保険や国民年金に加入する必要がある。一日の隙間なしにである。月末日一日だけの加入でも1か月分の保険料を納める必要がある。しかも、健康保険・厚生年金の保険料は会社が半分負担するが、国民健康保険・国民年金の保険料は全額被保険者が負担することになる。
不自然な月末前日退職の提案は要注意です。ちなみに、上記相談については、会社に対して年金事務所に離職日の訂正の手続をするように求めた結果、会社が月末前日退職を月末退職に訂正する手続をとることで解決に至った。(直井)