上司のセクハラ行為が原因で体調を崩し1か月ほど出勤できない状態が続いていたところ、会社から突然、無断欠勤が1か月以上続いているので就業規則の規定に基づき自然退職とするとの通知がきたが、納得ができないとの相談があった。
自然退職とは、就業規則や雇用契約に定められている事由を満たした場合、労働者や会社の特段の意思表示(退職する、解雇するなど)がなくとも労働契約が自然に終了し退職扱いとなることをいう。
就業規則に規定のある自然退職の代表的な事由としては、「病気休職期間が満了しても復職できない場合」がある。
特段の意思表示を必要としないという点で定年退職も自然退職の一種である。
「一定期間続いた無断欠勤」が自然退職の事由として挙げられることもある。
確かに、本件会社の就業規則には、「会社に届出のない欠勤が連続1か月に及んだ場合、1か月を経過した日をもって退職とする。」との規定がある。
しかし、労働者にとって退職は生活の糧を失うという重大時であることから自然退職手続きにも一般の解雇手続きと同様な配慮が求められる。
会社は長期間の無断欠勤の社員本人に対し積極的に連絡を取り社員の状態を把握すべく努める義務がある。
会社は社員に対して、安全に働く環境を提供する義務を負っているからである(安全配慮義務、労働契約法5条)。
本相談事例の場合、会社は、欠勤者の状態や意思を積極的に確認しようとすることもなく、ただただ1か月間の経過を待って自然退職の通知を発した疑いがある。
また、欠勤の原因が上司のセクハラなど会社に原因がある場合は別の配慮が求められることも当然である。
したがって、本相談事例においては自然退職の事由(無断欠勤)に該当するという会社の主張は疑問であると言わざるを得ない。(直井)