アスペルガーであることを会社に伝えたら内定が取り消されたという労働相談を受けた。
内定決定後の内定者合宿への参加など予定された手続きも済み後は入社予定日を待つだけの状態であった。
相談者は、日頃から気になっていたことがあったので、たまたま精神科を受診したところ、アスペルガー症候群であるとの診断を受けた。
会社の担当者にその旨を伝えたところ、担当者から口頭で内定を取り消す旨の通知を受けたとのことである。
アスペルガーを理由とする内定取消ならば、会社の対応は違法・不当であるといわざるを得ない。
相談者には内定取消の理由を文書でもらうようにアドバイスした。
でも、なぜ、間近に入社を控えた相談者が受診結果をそのまま会社に伝えたのか疑問を感じた。
普通は自分に不利になる可能性のある情報は隠したがるものである。
プライバシーにかかわることでもある。
その疑問を率直に相談者に尋ねたら、嘘をつくことが苦手なのだという回答であった。
「正直すぎること」は、アスペルガー症候群の特徴のひとつといわれる。
コミュニケーションにおいて「空気が読めない」という欠点であると評価されることが多い。
先日、国連で環境問題について演説したスウェーデンの16才の高校生であるグレタさんのことを思い出した。
彼女は自らがアスペルガー症候群であることを公表している。
グレタさんは、「アスペルガーは病気ではなく、ひとつの才能です。・・・アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう。」とfacebookで発言している。(直井)
障害者雇用枠で入社した労働者から相談を受けた。
面談をした感じでは健常者と何ら変わるところは感じられなかったが、発達障害とのことである。
相談者の話しでは、採用時の面接で自らの障害との関係で丁寧なOJTを人事担当者に依頼した。
しかし、配置された職場は全体的に忙しいため、指導役の社員を含め皆各自の業務に手一杯で、判らないことを教えてもらおうにも、頼みにくい状態である。
相談者はこれを平成28年施行の改正障害者雇用促進法の定める合理的配慮義務違反として法的に争いたいとの意向であった。
障害者雇用を使用者の善意に頼るのではなく、働くことを権利として障害者に保障する法の建前を正面から実現しようという意気込みである。
確かに、障害者雇用促進法は、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮義務)を使用者が負うと規定している。
しかし、「使用者の過度な負担とならない限り」との但し書き付きである。
合理的配慮を法的な権利として裁判手続きで実現するには、使用者の「過度の負担」とならないという高いハードルがある。
さらに、本件相談の解決の難しさは、身体障害や知的障害と異なり、一見する限りでは健常者と異なるところが認められない発達障害(精神障害)ゆえの問題もある。
特別扱いすることに対する、職場の先輩・同僚の理解の得にくさがあるからである。(直井)