☆更新拒否通知後の無期転換申込権の行使☆

庶務業務担当の契約社員として更新を重ね6年間近く勤務を継続してきたが、現在の契約の期間満了日の1か月ほど前に勤務成績不良を理由として次回は更新はしない旨口頭による通知があったとの相談があった。

相談内容は更新拒否の理由に納得できないということとともに、今からでも無期転換の申し込みはできないかというものであった。

 

労働契約法18条は、有期労働契約の契約期間が通算して5年を超える場合、労働者に無期契約への転換の申込権が発生すると定める。

申込の時期については、「現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に」と定めるのみで特に制限を定める規定はない。

したがって、会社から更新拒否を通知された後であっても、契約期間の満了日までは無期転換の申し込みはできる。

 

また、常に更新がなされるかどうか不安定な状況に置かれている有期雇用労働者の地位の保護という労働者18条の趣旨から、無期転換申込権の事前の放棄の合意は公序違反(民法90条)と評価され無効となる。

もっとも、無期転換権が発生した後に労働者はそれを放棄することは、労働者の自由な意思に基づいているものであれば、必ずしも公序違反と評価されるものではない。

 

本件は、相談者が無期転換申込権を放棄したと認められる特段の事実も認められないことから、契約期間満了日前までに文書による無期転換の申込をしたうえで、更新拒否ないし不当解雇を争うことをアドバイスした。(直井)

 

 

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☆試用期間と有期雇用☆

6か月の有期雇用の期間満了による契約終了を言い渡されたIT技術者から相談をうけた。

相談者は正社員としての雇用を希望して採用に応募した。

始めは試用期間として6か月間の有期雇用契約を締結するということになり、雇用期間6か月の契約書を取り交わした。

 

採用時に取り交わした契約書は単に雇用期間6か月間と記載のあるもので、試用期間としてのものであるとの記載はなかった。

その後、試用期間は1度6か月間延長されたが、延長後の契約期間満了前に突然契約期間満了による契約終了を言い渡された。

 

試用期間として有期契約を利用する例は少なくない。

使用者は通常の試用期間とは違って、有期契約としての試用期間ならば期間満了を理由として解雇(雇い止め)が容易であると考えているのであろう。

 

しかし、使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解される(神戸弘陵学園事件最高裁判決)。

 

試用期間か否かは、契約の形式ではなく実態で判断するのが裁判所の立場であり、有期雇用が試用期間であると判断される場合は、単に期間満了を理由とする解雇は許されない。

本採用を拒否する合理的な理由が必要である。

 

本件においては、あくまで本採用拒否(正社員にしないこと)の理由を明らかにするように会社に求めるようにアドバイスをした。(直井)

 

 

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☆有期雇用の期間途中の退職☆

6か月の期間で働く契約社員から相談があった。

ネット情報などによると、退職するには2週間前にその旨を会社に伝えればよいと聞いているが、そのとおりか。

上司のパワハラ的言動もあることから、転職活動中でよい条件の転職先が見つかり次第、期間満了を待たずに退職したいとのことであった。

 

2週間云々は、民法627条に基づくものであり、期間の定めのない雇用契約である正社員に適用がある規定だ。

残念ながら雇用期間の定めのある契約社員には適用がない。

 

有期雇用契約に基づく契約社員に適用のある民法628条は、期間途中の解約の申出には「やむを得ない事由」を要求している。

労働条件が初めの約束とは違うとか、長時間労働で体調を壊しそうだとかの事情がこれにあたる。

より条件のよい会社を見つけたので転職したいとの理由は、「やむを得ない事由」には当たらないが、上司のパワハラはこれにあたると考えられる。

 

しかし、いずれにしても労働者は使用者の奴隷ではないのだから、働くことを強制されことはない。

仮に、「やむを得ない事由」が認められなくても、突然辞めることによる損害賠償を請求されるリスクを負うだけである。

 

そのリスクも、取り替え可能な労働に従事しているアルバイト的な働き方を強いられている契約社員には無用な心配であるといえる。

なお、辞める者の代替を募集することに伴う費用は、使用者が通常負担するものであり、辞めた者に請求できる損害には当たらないと解されている(直井)

 

 

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☆「雇用期間=試用期間」の労働契約☆

雇用期間3か月の労働契約書を交わした労働者が期間の途中に解雇を言い渡され相談に来た。

使用者は、雇用期間3か月はすべて試用期間であり、解雇権濫用法理の適用はないと主張している。

3か月間の雇用期間の全てが試用期間という労働契約はどのような法的な意味をもつのだろうか。

 

判例(神戸弘陵事件最高裁判決)によれば、雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適正を評価・判断するためのものであるときは、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解される。

この判例法理に従えば、上記契約は3か月間の試用期間付きの正社員契約ということになる。

 

また、一般的に試用期間付き労働契約は、解約権留保付きの労働契約であると解されている。

しかし、試用期間中であろうと、使用者は解雇権濫用法理の適用を受けないで解雇の自由を有するわけではない。

上記最高判決はこの点について要旨以下のように判示する。

 

試用期間における留保解解約権の行使が許される場合とは、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるものの、当初知ることが期待できなかった事実等により、引き続き雇用しておくことが適当でないと判断できるだけの客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認することができる場合に限られる。

 

先の相談者には、解雇の無効を理由として正社員としての地位の確認を求めることが可能であるとアドバイスをした。

 

解雇権濫用法理の適用を免れ、解雇の自由の確保を目的とする「雇用期間=試用期間」の契約は、試用期間付き正社員契約と解されることから、むしろ労働者にとって有利な契約となる可能性がある。 (直井)

 

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