ほっとユニオンは団体交渉での自主解決が行き詰まったとき、次の手段として、労働審判(裁判所)や労働委員会に解決の場を移すことににしている。
労働審判は、残業代未払いや不当解雇などで使用者の行為の違法性の立証が比較的容易な場合に利用する。
労働審判は、裁判所の手続きであるが審判まで至らず、調停(話し合い)手続きで解決することが多い。
労働者が求めている解決内容が金銭の支払いである場合に有効である。
これに対し、労働委員会における和解手続きは窓口が広く柔軟性がある。
法的請求権として使用者に強制することが事実上困難な事案にも有効である。
形式的には不誠実団交ないし団交拒否の不当労働行為として申立てをする。
しかし、実際は和解手続きにより団交内容(労働者と使用者間のトラブル)の実質的な解決を図ることが可能である。
先日、傷病手当手金の申請手続きをめぐる争いが労働委員会の和解手続きで解決した。
退職をめぐる争いのなかで傷病手当手金の申請手続きに協力しようとしない使用者に困り果てた労働者がほっとユニオンに相談にきてユニオンに加入した。
ほっとユニオンは団体交渉を申し入れたが、交渉は一向に進展しなかった。
使用者の露骨な嫌がらせである。
ユニオンは労働委員会に使用者の対応は実質的な団交拒否にあたるととして救済申し立てをした。
労働委員会での和解手続きの中で使用者が傷病手当基金申請手続きを行う旨の和解が成立した。
使用者・従業員間でこじれた感情の問題もあり、ユニオンによる対面での交渉では説得しきれなかった使用者を労働委員会の公益委員、労働者委員、使用者委員が上手に説得してくれたのである。
公労使の三者構成の仕組みをもつ労働委員会の真骨頂の発揮といえる。
もっとも、傷病手当金申請手続きにおける使用者の協力は健康保険法上の使用者の義務である。
保険者である協会けんぽが強力に使用者を指導してくれれば、このような形での労働委員会活用法も無用になるだろう。(直井)