☆シフト制のパート・アルバイトの有給休暇☆

週3日ないし4日のシフト制で働くアルバイトが有給休暇の申請をしたところ、使用者の代理人弁護士からシフト制のアルバイトには有給休暇は認められない、と以下の内容の通知があったとの相談があった。

 

「労基法39条3項において、その適用対象とされているのは、「一週間の所定労働日数」が定められている労働者に限ります。本件において、会社と貴殿との間の労働契約において、貴殿の所定労働日数は定められておらず、貴殿が自由に出勤日数を調整できるものです。したがって、所定労働日数の定めがなく、貴殿が自由に決められる契約内容において、そもそも有給休暇を取得する法的権利を有しません。」

 

確かに、相談者が週5日勤務のフルタイムではないことから、労基法39条2項の定める通常の日数の有給休暇の付与は認められない。しかし、労基法39条3項の比例付与の対象とはなる。

 

労基法39条3項は、「通常の労働者の一週間の所定労働日数」と「当該労働者(パート、アルバイトなど短時間労働者)の一週間の所定労働日数」との比率を考慮して当該労働者(パート、アルバイトなど短時間労働者)に対しても勤務日数に応じた有給休暇を付与すべきことを定めている。

 

問題となるのは、シフト制などで週の所定労働日数がまちまちの働き方をしているパート・アルバイト(非定型的パート・アルバイト)の取り扱いである。

これについて、行政通達(平成16年8月27日「都道府県労働局長あて厚生労働省基準局長通知」基発0827001号)は以下のとおり述べている。

 

「非定型的パートタイムヘルパー等について、年次有給休暇が付与される日数は、原則として基準日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数であるが、予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して算出することとして差し支えないこと。したがって、例えば雇い入れの日から6箇月経過後に付与される年次有給休暇の日数については、過去6箇月の労働日数の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断することで差し支えないこと。」

 

この通達は直接的には訪問介護労働者に関して述べられたものであるが、労働日数が非定型的な働き方をしているパート・アルバイトについては、業種に関わらず適用されるものと解される。

したがって、有給休暇の比例付与の日数について、相談者のような非定型的なシフト制のパート・アルバイトの所定労働日数は、基準日における今後1年間の所定労働日数ではなく、基準日前の実績によって算出されることになる。

 

会社側弁護士のいう、シフト制においては所定労働日数の定めがないから比例配分の有給休暇は法的には発生しないとの主張は、労働者保護法である労基法の趣旨を全く無視したご都合主義の解釈であるといわざるを得ない。(直井)

 

 

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☆シフト制と雇用調整助成金の不正受給☆

シフト制で働く労働者から相談があった。

コロナ禍で会社の仕事が減少し、それに伴って一方的にシフト(毎月の勤務日数)も減らされていたところ、ついに退職を勧奨され辞めることになった。

 

ついては、この間シフトが減らされて収入が減った分について従業員が直接申請できる休業支援金を申請したいので、会社記載用紙への記載を上司に求めたところ断られた。

理由は、会社がその分について雇用調整助成金の申請をしているとのことであった。

 

会社は、既に確定済みのシフトを減じた分については労働基準法の定める休業手当(賃金の6割)を支払っていたが、シフトが未確定な期間(翌々月以降)につてはシフトを減らしても労基法上の支払い義務はないとして休業手当を支払っていなかった。

にもかかわらず、その分について雇調金の申請をしているということは雇調金の不正受給をしていたということになる。

 

上司は、休業支援金に相当する額を支払うから、休業支援金の申請は辞めてほしいと相談者に求めた。

相談者の心配は上司の申し出を受けたら、会社の詐欺行為(雇調金の不正受給)の共犯となり、罪に問われるおそれがあるのではないかということだった。

 

相談者が、会社の行政に対する虚偽の申請にも、それにより給付金の不正受給を受ける行為にも直接加担していないことから、刑事罰の対象となる恐れはない旨を伝えた。

私のアドバイスを受けて相談者がどのように対応するかは不明だ。

 

コロナ禍での休業手当の問題は、シフト制で働く労働者の無保護状態を顕在化させた。(直井)

 

 

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☆シフト勤務でも有給休暇は当然取れます!☆

有給休暇がとれないという警備会社の従業員の相談を受けて、使用者と団体交渉をした。

 

我が社はシフト制(1か月単位の変形労働時間制)をとっており、毎月翌月のシフトの調整をする際に個々の従業員の希望をいれて休み(勤務を要しない日)を決定しているので、有給休暇の必要はない、そもそもシフト決定後に勝手に休まれたら警備先への人員のやりくりができなくなる、との使用者による最初の説明を聴いて唖然とした。

 

そもそも、有給休暇は「勤務を要する日」に有給で休めることを保障する休暇制度である。

有給休暇の趣旨は、労働者の心身のリフレッシュを図ることにある。

 

シフト制の場合、シフト決定後に「勤務を要する日」と指定された日に有給休暇の請求をすることは当然許される。

この会社の場合は、シフト調整時に所定労働日の一部を有給休暇として申請することも認めていなかったようである。

 

有給休暇をとることを前提に必要な人員を確保することは使用者の責任です。

労基法の有給休暇に関する定めは強行法規であるので、有給請求権を事前に放棄する契約は無効です。

 

また、労働者の請求(時季指定)による有給休暇の取得が進まないことから、労働基準法が改正されて、2019年4月からは、年10日以上有休が付与される労働者に対しては企業は5日間の有休を指定して休ませることが義務づけられた(39条7項)。

有給休暇の取得は労働者の権利であるだけでなく、使用者の義務でもあるのです。(直井)

 

 

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☆シフト制における休業手当て☆

正社員としてシフト制で働いている相談者が体調不良で2週間ほど休んだ後、明日から出社すると会社に連絡したところ、解雇予告の言い渡しとともに言い渡し日から解雇日まで出社におよばずと命じられた。

事実上の即日解雇であるが、解雇言い渡し日から解雇日まで30日以上あることから解雇予告手当の支払い義務は発生しない。

 

相談者の不満は解雇そのものの不当性にあるのだが、それは別として、解雇言い渡し日から解雇日までの賃金は支払われるのであろうか?

会社は解雇言い渡し日から先にシフトの指定がないことを理由に賃金の支払を免れるつもりのようだ。

 

しかし、出社に及ばないとしてシフトを組まないのは会社の責任であり、シフトがないことを理由として賃金の支払いを免れることは許されない。

会社側の都合で労務の受領が拒まれているのだから、労働者は反対給付としての賃金を受ける権利は失われない(民法536条2項)。

 

正社員である限りシフト制であっても、月何日出勤するなど所定労働日数、所定労働時間の定めがあるはずである。

シフトが組まれていない場合でも、所定労働日数、所定労働時間に基づいて賃金請求権が発生することになる。

 

なお、本件では休業手当ての支払い義務も発生する。

休業手当ての支払いは、平均賃金の6割を罰則の強制をもって使用者に支払わせる労基法上の義務である。

しかし、たとえ、6割の休業手当てが支払われたとしても、労働者は民事上の請求権として通常勤務していれば支払われるべき賃金額に不足する額について請求権を失うものでにない。

 

 

すなわち、かりに休業手当てが支払われたとしても、通常の賃金額に不足する額についての請求をあきらめることはない。(直井)

 

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