安倍首相は去ったがアベ政治は続く。
新首相の座についた菅氏はアベ政治の継承を掲げ、「めざす社会は自助、共助、公助、そして絆だ」と述べる。
「自助、共助、公助」の言葉自体は特定のイデオロギーを体現したものではない。
しかし、アベ政治と一体となると俄然イデオロギー性を帯びる。
アベ政治のイデオロギーは自己責任や競争を重んじる新自由主義である。
政府の役割を縮小し、経済活動の自由を第一とする考え方である。
当然「自助・共助、公助」のうち「自助」に重点が置かれることになる。
ところで労働組合は共助の組織である。
経済的弱者である労働者は、助け合い集団となることによってはじめて、経済的強者である企業の違法・不当な振る舞いに異議を申し立てることが可能となる。
ほっとユニオンは、共助を大事に育てる社会を目指したい。(直井)
就職して初めての賃金支払い日を待てずに退職する人も少なくない。
ガールズバーを入店後1か月も待たずに辞めた人からの相談があった。
退職後に到来した賃金支払日に賃金が全く払われなかったとして相談にきた。
この種の業界に多く見られるように賃金額など労働条件を記載した契約書(ないし労働条件通知書)の類いの書面はないとのことであった。
次のようにアドバイスした。
(1)まず、口約束であっても約束した賃金額と勤務日数・時間をもとに概算でもいいからともかく未払い賃金額を計算すること。
募集広告やシフト表やメールでのやりとりが証拠になります。
(2)次に請求金額と支払期限を記載した請求書(コピーは手元に残しておくこと)を経営者に郵送すること。
ガールズバーでは店長だけが表にでていて、経営者が不明の場合がよくありますが、経営者の調査は後の裁判手続を考えると必要です。
経営者は(営業許可を出している)保健所で調べることができます。
請求書の郵送方法は、配達された日付がネット上で確認できる特定記録郵便が料金面からもお薦めです。
(3)期限までに支払がない場合、次に採る手段は大きく分けて三段階あります。
①先ず、無料の行政を利用する。
労働基準監督署に労基法違反(賃金未払い)で相談・申告する。
労基署の指導にも関わらず、使用者が任意に応じなかった場合は、最終的な決着手段である裁判所の利用を見据えたより強い対応が必要となります。
②弁護士に取り立て手続を委任するという方法が考えられます。
弁護士は敷居が高いと考えている人には、ほっとユニオンは、次の方策を薦めています。
③ユニオンに加入して、労働審判の申立てを視野にいれた上での団体交渉を申し入れる。
④団体交渉で解決しない場合は、すみやかに労働審判の申立てをする。
ほっとユニオンは、団体交渉はもとより、団体交渉が不調に終わった場合の労働審判の申立てのお手伝いもします。(直井)
コロナ特例の雇用調整助成金を利用して10割補償の休業手当を求めるなど使用者と労働条件について話し合うために労働組合を作りたいが、どのような手続き必要かと聴かれることがあります。
労働組合の定義規定としては、労働組合法に「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」(2条本文)とあります。
しかし、行政への届け出とか許可とか、組合結成の手続きについての法の定めはありません。
2人以上の労働者が集まって労働組合を結成するという合意をすればいいだけです。
しかし、労働組合は単なる個人の集合体ではなく団体ですから、一般の団体と同様に、代表者を定め、運営上の約束ごと(組合規約)を定める必要があります。
組合規約については、労働組合法5条2項に名称(1号)、所在地(2号)など必要的記載事項が定められています。
もっとも、5条2項の定める必要的記載事項には、会計報告に「職業的に資格のある会計監査人による正確であることの証明書」を添付すること(7号)など小さな組合にとってはハードルの高いものもあります。
しかし、労働組合の定義の基本的要件(2条本文)を満たすものならば、かりに規約に不備があっても、団体交渉権、刑事・民事の免責など労働組合としての基本的な保護を享受することができます。
職場の同僚と語らって気楽に労働組合を名乗り、使用者に団体交渉を申し入れましょう。
自分たちだけで労働組合を結成し、会社に交渉を申し入れることが面倒ならば、既存のユニオンに加入して、企業内の分会を結成して団体交渉を申し入れる方法もあります。
ほっとユニオンはこのような分会作りのお手伝いもします。(直井)
ユニオンを脱退したい、どのようにすればいいのか、との相談を受けた。
ユニオンへの相談としては異例のものである。
ほっとユニオンは他のユニオンの案件には介入しない方針である。
相談者の話しは概ね以下のとおりである。
訪問介護事業所でヘルパーとして勤務していたところ、社長から突然解雇を言い渡された。
納得できないので、帰宅後、ネットで無料相談を捜した。
はじめにみつけた弁護士事務所での無料電話相談のやりとりは以下のとおりであった。
月額25万円の給与であること及び簡単な解雇の経緯を説明したところ、100万円はとれる案件だといわれた。ただし、弁護士費用として着手金20万円と成功報酬(獲得した金銭の20%)はかかるとのことであった。
着手金20万円に躊躇した相談者は、さらにネットを検索し、無料を謳っている○×ユニオンのホームページがヒットした。
電話での相談の後、会社に対し具体的に交渉を始めるには組合に加入する必要があるといわれた。
メールで送信された加入用のulrをクリックすると組合加入申込書の書式が表示された。
そこに氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを記載して送信した。
解決金の30%を義援金として支払うことへの同意を求めるチェック欄にも同意のチェックをいれた。
その後、交渉担当者を名乗るA氏から電話があり、社長への連絡方法などを尋ねられた。
そして、A氏は社長と電話で交渉を始めたようである。
しかし、社長の対応は堅く、解雇言い渡しの際に相談者に支払いをほのめかした給与1か月分(25万円)以上のものは出せないということになった。
それも3回の分割払いだという。
相談者はそれでは最初の社長の提案と額が同じであること、分割ということでは条件はむしろ低下していることから、再度の交渉をA氏に依頼した。
A氏は怒りだし、「自分では出来ないから代わりに交渉をしてやっているのになんだ」、「なんなら降りてもいい」と逆ギレされたという。
労働組合は、一人では弱者である労働者がお互いに助け合う共助の組織だ。
組合の担当者の顔も見ないで、メールと電話のやりとりだけで、交渉を丸投げするのは安易に過ぎる。
どっちもどっちだという気もする。(直井)
ほっとユニオンの相談活動は、労働関係法令などの情報を与えるだけではなく、解決への具体的なお手伝いをすることを売りにしている。
対応に戸惑う相談のひとつに、相談者が何を望んでいるのか不明確な相談がある。
相談内容は多様である。
社会保険に加入させてもらえないこと、サービス残業があること、パワハラを受けていること、セクハラを受けていること、などなど。
相談員は相談者の不安・不満を一通り聞いた上で、上司や使用者の行為の不当性・違法性について説明する。
次に相談者の不安・不満の具体的な解決策について話しを進めることになる。
ユニオンに加入しての交渉だけでなく、社内のコンプライアンス部署への通報・相談や、労働基準法違反の事実が確認できれば労基署への違法申告を、健康保険法違法の事実が確認できれば年金事務所などへの是正を求める相談を提案するが、相談者が話に乗ってこないことがある。
不当ですよね、違法ですよね、と説明に一応納得した後、また、使用者の不当・違法な行為についての話しを繰り返えす相談者がある。
違法ならば、自らが行動を起こさなくても、自分以外の誰かが是正に動いてくれることを期待しているようである。
雇用関係の継続を前提とした相談に多く見られる。
上司や使用者とは自らが表に出て争いたくない。
自分が表に出ないで、第三者が代わりに解決してくれる方法はないかと考えているようである。
しかし、率直に言って、自らが声を上げる以外解決策はない。
労働基準法など法律に定めている権利があっても、現場の労働者ひとり一人が違法状態の是正を求め声を上げなければ、絵に描いた餅になってしまう。
ほっとユニオンは問題解決のために相談者と一緒に行動します。
しかし、丸投げは困ります。(直井)